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卵の模様でカッコウの托卵に対抗

Nature ダイジェスト Vol. 11 No. 9 | doi : 10.1038/ndigest.2014.140904

原文:Nature (2014-06-23) | doi: 10.1038/nature.2014.15443 | Patterned eggs fend off cuckoo usurpers

Katia Moskvitch

カッコウの托卵被害に遭っている鳥たちが自らの卵を守るために描き出した戦略が、視覚認識ソフトによって明らかになった。

Thinkstock

カッコウ科の鳥は、他の鳥の巣に卵を産みつけ、抱卵や子育てを巣の主(host;仮親)に押し付ける「托卵」という寄生行動をすることで悪名高い。一方、一見無力な被害者に見える仮親たちも、侵入者の卵を発見しやすいよう、自分の卵を見分ける際に目印となる特徴的な模様を進化させることで托卵鳥の寄生に対抗していることが知られている。今回、パターン認識ソフトを使った研究から、仮親がこうした模様を作り出すために用いるさまざまな戦略が明らかになり、2014年6月18日付のNature Communicationsで発表された1。この研究ではまた、鳥類の視覚情報処理の仕組みに関する知見も得られた。

カッコウ(Cuculus canorus)の卵は、托卵相手である仮親に見破られないように、仮親の卵によく似た外見をしている(編集部註:似ていないこともあるが、それはカッコウが托卵相手を乗り換えて比較的間もない場合だと考えられている)。カッコウの卵は通常、仮親の卵よりも先に孵化し、誕生したヒナは仮親の卵やヒナを巣の外に放り出して自らの生存を確保する。そのため、托卵された鳥はそうした悲劇を回避するために、自分の巣に産みつけられたカッコウの卵を孵化前に発見して取り除かなければならない。

今回の論文の筆頭著者である、ハーバード大学(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)の進化生物学者Mary Caswell Stoddardは、「銀行がドル紙幣に特殊な透かしを入れるように、仮親たちも独自の防衛手段をとり得ることが分かっています」と言う。

Stoddardらはまず、ロンドン自然史博物館(英国)に収蔵されている、カッコウに托卵されることが知られているアトリ(Fringilla montifringilla)やニシオオヨシキリ(Acrocephalus arundinaceus)など計8種類の鳥の卵689個について、鳥の目に見えるのと同じ波長の光を検知するカメラを使い、写真を撮影した。そして、画像解析を用いてこれらの写真を全て変換し、卵の模様が鳥たちにどのように見えているかを示す画像にした。

次に研究チームは、鳥が、卵の模様をどのように見て、その情報をどのように処理しているかを解明するため、鳥が視覚情報の評価に用いていると予想される方法で卵の殻の模様を分析する「NaturePatternMatch」というパターン認識アルゴリズムを作成した。

そしてこのソフトウエアを使い、それぞれの種について、ある雌が一度に産んだ卵同士、また、それらの一群を別の雌の卵と比較したところ、仮親の卵のほとんどに目印となる特徴的な模様があり、こうした模様はカッコウの托卵で大きな被害を受けている種ほど洗練されていることが分かった。論文の共著者であるケンブリッジ大学(英国)の進化生物学者Rebecca Kilnerによると、仮親にとって「いい特徴」とは、巣の中に紛れ込んだカッコウの卵を見分けて除去しやすい特徴を意味するらしい。

Stoddardらは他にも、こうした仮親たちが、種ごとに異なる戦略を用いてカッコウの托卵に対抗していることを明らかにした。例えば、セアカモズ(Lanius collurio)では一度に産む卵の間で模様がどれも非常によく似ているのに対し、ニシオオヨシキリでは一度に産む卵の模様の類似性は中程度であるものの、その模様は雌ごとに劇的に異なる。一方で、空間的複雑性の高い模様の卵を進化させた種もいる。まばらで不均一な模様のある卵を産むアトリがその一例で、これは非常に見分けやすい「いい特徴」だとKilnerは言う。

これまでの学説では、仮親が托卵鳥の卵を見分けるのに効果的な卵の模様には以下の3つの特徴が必要だとされてきた。それは、①模様が複雑であること、②一度に産む卵同士で模様がよく似ていること、③同じ種であっても雌ごとに卵の模様が異なっていること、である。ところが今回の研究結果は、これら3つの戦略の全てを用いる必要はないことを示している。これらの戦略はそれぞれが個別に十分効果的で、仮親が自身の卵を認識してカッコウの卵を排除することを可能にしているのだ。

今回の研究には参加していないマッセイ大学(ニュージーランド・オークランド)の生態学者James Daleは、Stoddardらのソフトウエアについて「托卵行動に限らず、より一般的な視覚認識行動の理解に非常に有望であることが示されました」と評価する。

一方、ニューヨーク市立大学(米国)の生物学者David Lahtiは、コンピューター・プログラムが動物の脳の認知プロセスをどこまで模倣できるか確信は持てない、と警告しながらも、「どこかで一歩を踏み出す必要があるのも確かです」と言う。「研究者たちは早速、この新しい仮説を検証しようと、フィールドに飛び出していくことでしょう。私自身もその1人です」。

(翻訳:三枝小夜子)

参考文献

  1. Caswell Stoddard, M., Kilner, R. M. & Town, C. Nature Commun. http://dx.doi.org/10.1038/ncomms5117 (2014).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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