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伝承を活かす 〜リバース薬理学の挑戦〜

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背の高いフラニ族の女性が、王女のような装いで伝統治療師の小屋にやってきた。このマリ南部の遊牧民族がみんなしているように、長く流れるような青いドレスをまとい、唇をインディゴとヘンナで染め、大きな金色の三日月形の耳飾りをつけている。だが小屋に入ると、治療師は女性がふらついているのに気付いた。彼女は最近の出産で弱っており、手のひらは貧血のため青白く、額は熱かった。ひどく衰弱し、病状を話しながら意識が遠のくほどだった。治療師は「ソウマヤ」と宣告した。マラリアのことだ。

この様子を見守っていた2人の西洋医、スイスのローザンヌ大学のBertrand Grazと英国オックスフォード大学のMerlin Willcoxが仕事に取りかかった。女性はインフォームド・コンセントの用紙に署名し、病歴を伝え、マラリア原虫数などの検査のために採血された。黄色いケシの花の葉を煎じたハーブティーによる治癒率を評価する注目の研究に参加するのだ。3日後の再診時、彼女は順調に回復していた。

米国食品医薬品局(FDA)が承認した薬には自然界由来のものが数多くあるが、伝統的な薬草で臨床試験を実施するのは主流ではない。天然の薬を探す従来の方法では、植物や真菌、細菌から純粋な化合物を単離し、実験室で有望なものを選抜して最適化し、動物で安全性を評価してから、ようやくヒトでの臨床試験に進む。

しかし、この従来法がもはや破綻していることに異を唱える人はほとんどいないだろう。治験薬の95%は臨床試験で失敗に終わっているのだ。あまりの失敗の多さに、製薬会社は天然化合物に目を向けなくなった。だが、莫大な数の合成化合物を小さな試験管で試験するという代替法も、あまりうまくいっていない。

こうした状況に、GrazとWillcoxは天然物探索法を逆転しようと試みている。まずヒトの研究から始め、その後に活性物質を単離するという順序だ。さまざまな伝統的薬草を使っている患者を注意深く観察して最も有望なものを特定し、その薬草で臨床試験を行う。最後に活性物質を特定し、そこから新薬を開発する。

この方法は「リバース薬理学」と呼ばれ(記事末尾部、編集部ノート参照)、伝統医学のアーユルベーダから新薬を探索したインドの科学者の取り組みに端を発する。新薬の製造につながらなかった場合でも、どの薬草に効き目があってどの薬草にないかを伝統治療師や地元住民に助言できる利点がある。また、初期研究に必要なのは紙と鉛筆くらいなので、開発途上国の予算でも実施できる。彼らがマリで行ったケシの一種の研究で有望な結果が示されたのをきっかけに、世界の意外な保健機関も薬草を見直し始めている。

失敗続きの薬剤探索

アスピリンやコデインなど今日使用されている有名な薬には、薬草として使われていた植物の研究(民族植物学)から生まれたものがいくつかあるが、そうした成功例は今やほとんど見られなくなった。問題は、多額の投資を要する新薬開発に先立って植物の可能性を評価する明解な方法がなかったことにある。

一方の民族植物学は民族植物学で、分析よりも記述に重点が置かれてきた。人類学者がアマゾンでシャーマンと共に過ごして彼らが使う植物やその方法について記録しても、現地にとどまってそれらの調合薬の有効性を評価することはほとんどない。

また、さまざまな生物種を片っ端から集めて試験する方法もうまくいかなかった。単離した化学物質がネズミやシャーレで有望そうに見えても、ヒトでは安全とも有効とも限らない。その逆も言える。未知の作用メカニズムを持つ植物性化合物の場合、実験室での一般的な試験では見逃されてしまうこともあるだろう。

そうした生物資源探査の有名な例に、1990年代にメルク社(ドイツ・ダルムシュタット)がコスタリカ国立生物多様性研究所(エレディア州)と共同で行った試みがある。コスタリカの国立公園に見られるあらゆるヤシやゾウムシを調べ、薬としての可能性を評価した。このプロジェクトは大当たりが1つもないまま6年前に打ち切られた。

大手製薬会社の研究者は基本的には自分で合成できる化合物を調べる方がよいと判断し、法務部門もその方が特許権を主張しやすいと気付いた。現在、これらの製薬企業はハイスループット・スクリーニングという自動システムを使って数百万もの合成化合物について生理活性の有無を評価している。

もちろん、生理活性化合物の特定は最初の一歩にすぎない。米国では創薬から当局の承認を得るまでに12年の歳月と8億ドル(約800億円)の費用がかかっている。また、サノフィ・アベンティス社(現サノフィ;フランス・パリ)の抗肥満薬アコンプリアや、ファイザー社(米国ニューヨーク)のコレステロール薬トルセトラピブなどの薬が、お金のかかる臨床試験の最終段階になって失敗に終わったことは有名で、このモデルが先進国でうまくいっていないことを裏付けてきた。途上国の顧みられない病気となるとさらに状況はひどく、ほとんどの人は薬(概して海外製)を買う余裕がない。

マラリア原虫に感染する人は毎年2億人に上る。そのほとんどがアフリカの住民で、現在の代表的な治療薬は高過ぎて手が届かないことが多い。

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効果的な新薬がなく既存薬は高額過ぎるというこの状況は、マラリアに悩む地域では特に問題だ。熱帯諸国では蚊が媒介する寄生虫によるこの感染症に毎年2億人が感染し、50万人が死亡している。マラリアは研究者が講じてきた策にほぼことごとく抵抗性を進化させてきた。

世界のマラリア症例の85%を占めるアフリカでは、現在の代表的な治療法であるアーテミシニン併用療法に対する経済補助があり、国の診療所や村の売店で入手できる体制にはなっている。だが道路事情が悪かったり粗悪な薬が流通したりしているせいで、実際には期待したほどの効果は挙がっていない。最近マリで行われた調査では、マラリアにかかった子供の87%はまず自宅で治療を受け、4分の1は伝統的な薬だけを投与されていた。一部の研究者はこれらを考慮し、伝統的治療法はもっと詳しく調べるに値すると考えている。

だが、時間はあまりない。アフリカなどの地方の伝統薬は、遠く離れた村にまで出張所を展開する中国の漢方薬業界との激しい競争と近代化の双方に脅かされている。「今研究しなければ、伝統薬は一世代で世界のほとんどの地域から消えてしまうだろう」とGrazは言う。

花の力

リバース薬理学の考えは、GrazとWillcoxがマリの魔法のようなケシに着目して試験を進める中で試行錯誤を重ねながら徐々に発展させてきたものだ。Grazは「観察的研究」を非常に重視している。これは観察に基づいて治療効果を推論するもので、患者を治療群と対照群に無作為に振り分ける「ランダム化比較試験」とは対照的だ。

Grazは薬の効果の有無を本当に確かめるにはランダム化比較試験しかないことは認めているが、この試験は非現実的な状況で一部の患者集団だけを対象に行われることが多いと指摘する。観察的研究は実験ではないが、診療所で患者の経過を記録・解析することで、現実世界で役に立つ優れたアイデアが得られる。

そうした逆転の発想のもと、Grazは2002年12月にマリにやってきた。マリ国立公衆衛生研究所の伝統医学部門長Drissa Dialloの協力を得て、自ら考案した「後ろ向き治療成績研究」という一種の観察的研究試験を企画した。

アザミゲシ(Argemone mexicana

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彼らのチームは何カ月もかけて、最近マラリアにかかった人のいる家庭を訪問し、治療のために単独または組み合わせて使われた66種類の植物をリストアップした。「効かなかったものが多い」とGrazは言うが、このデータには明るい材料が含まれていた。調査した952人の患者のうち30人は、メキシコ原産で19世紀にアフリカに持ち込まれたアザミゲシ(Argemone mexicana)の葉を煎じたお茶を飲み、全員が完全に回復したという。この研究は有望株を選び出すハイスループット・スクリーニングのようなものだが、実際の人間で調べているので、有望な結果はますます大きな意味を持つ。

Grazはこの情報をWillcoxに知らせた。Willcoxはマラリアに対する薬草の効果を調べる臨床試験をいくつか行い、まちまちの結果を得ていた。2人は以前に、Grazが後ろ向き治療成績研究で効き目のありそうな植物を特定したら、Willcoxが患者集団のその後を追跡するコホート研究を行う約束をしており、ゆくゆくは臨床試験もしたいと考えていたのだ。

だがGrazがマリ南東部のシカソ市のインターネットカフェに行ってアザミゲシに関連する事柄をウェブ上で調べたところ、気掛かりな情報が目に留まった。「アザミゲシ中毒:2症例の剖検所見」という論文だ。1998年、インドのデリーで3000人以上が発病し、65人以上がリンパ液の蓄積によって浮腫が生じて死亡した。患者は全員がアザミゲシが混入したマスタードオイルを食べており、このアザミゲシがサンギナリンという毒物を含んでいたのだ。

GrazとWillcoxは不安になった。彼らが期待しているマラリアの天然薬は、患者を治すのではなく殺してしまうのだろうか? 効果的な薬の多くは用量を間違えば命に関わるが、そうした事例はマリでは起きていなかったようだ。彼らはアザミゲシ茶の致死量を調べるために少しずつ用量を上げてマウスに与えてみたが、何ら悪影響は見られなかった。最終的に、サンギナリンはアザミゲシの種子だけにあり、治療師がお茶に使う葉には含まれていないと判断した。

こうして、晴れて研究を進められるようになった。2004年9月、Willcoxはミシドゥーグーというマリの村に到着した。首長のTiemoko Bengalyは祖父からアザミゲシの利用法を教わった伝統治療師で、この植物の有効性を調べる研究に喜んで参加してくれた。Grazの後ろ向き研究が過去の事例を調べるのと対照的に、Willcoxの前向き研究では患者をこれから追跡していくため、より厳密な観察と検査が可能になる。

WillcoxはBengalyが所有する日干しれんがと藁葺き屋根の建物の1つにピカピカのソーラーパネルと自動車用バッテリーを設置し、顕微鏡と遠心分離機、心電計を動かした。Bengalyにはケシの種子を振り落としてからお茶を煎れるようにとだけ注意し、他はBengaly自身が長年やってきた方法を取ってもらった。まきを燃やした火に黒い大釜をかけ、葉を3時間煮出す。雨期の真っ盛りで、初日から100人近い患者が診察してもらおうと詰めかけた。

当初Bengalyはお茶を3日に1回飲ませていたが、Willcoxは患者が回復していないことに気付いた。それが普通なのかと尋ねると、Bengalyはこの投与量の方がずっと“科学的”だと思うと答えた。疑問を感じ心配になったWillcoxは、普段はどのくらいの量を飲ませるのかと聞いた。Bengalyは決めていなかった。いつもは患者に乾燥した薬草を与え、1週間ほどできるだけたくさん飲むようにと伝えていたのだ。

この用量に上げたところ、効果が表れた。血液中のマラリア原虫の数は1µℓ当たり約3万から2000以下に低下した。2週後には成人患者の89%は熱が下がっていた。アザミゲシは効いているようだった。

マラリアに対するこの植物の有効性を証明するには、ランダム化臨床試験を行ってこの型破りな創薬プロセスを完結させる必要があった。GrazとWillcoxはミシドゥーグーに戻り、301人のマラリア患者を臨床試験に登録した。患者を一定用量のアザミゲシ茶で治療するグループと、アーテミシニン併用療法で治療するグループに無作為に分け、28日間追跡した。

結果は2010年に発表され、アザミゲシでは患者の89%が、アーテミシニン併用療法では患者の95%が回復した。このアザミゲシの試験にかかった総費用は50万ドル(約5000万円)で、スイス開発協力庁が負担した。WillcoxとGrazは、アーテミシニン併用療法の代わりにこの薬草を使えば費用を75%削減できると見積もっている。

この比較的早期段階の研究で得られた結果が非常に説得力のあるものだったため、GrazとWillcoxはマリなどアザミゲシを栽培可能な辺境では、マラリアの成人患者には重症者を除きアザミゲシ茶を勧めるべきだと主張している。そうすればマラリアが現代の薬に耐性を獲得するのを防ぐことができ、脳障害や死につながる最重症例のために貴重な薬をとっておくのにも役立つだろう。

リバース薬理学では、ここから従来の創薬プロセスと同じ過程をとる。アザミゲシから活性物質を単離して化学的特性を高め、ネズミの実験やヒトでの明確な臨床試験で評価する。従来の創薬モデルでは最初に調べる化合物があまりに多いため、問題のありそうなものはすぐに切り捨てられるが、リバース薬理学では対照的に、効果が高くて安全であることが確実な化合物が候補に上ってくる可能性がある。

実際、従来モデルではアザミゲシはとっくにお蔵入りになっていただろう。このケシの成分で試験管では最も強い抗マラリア活性を示すベルベリンは、マウスやヒトではマラリア原虫に対して効果を示さなかったからだ。植物全体を使うと効く理由はいまだに謎で、GrazとWillcoxは研究を進めて解明したいと考えている。

期待とリスク

リバース薬理学の手法はマラリアのような観察しやすい急性疾患に対する新薬を探すのに特に向いているが、それに限られるわけではない。10年ほど前、インドの大学と研究所、製薬会社が共同で、伝統的なアーユルベーダ医療から関節炎や糖尿病、肝炎に効く可能性のある薬をリバース薬理学的な方法を用いて特定する試みに乗り出した。インドのプネにあるリウマチセンターのArvind Chopraらは、アーユルベーダ治療師の全国調査をもとに関節炎に効果があるとみられる薬草をいくつかリストアップし、診療所での観察的研究と動物での薬理学的研究を始めた。

2013年8月、彼らは440人の患者を対象とした二重目隠しランダム化比較試験の結果をRheumatologyに発表し、4種類の薬草抽出物を混合したものがセレコキシブ(ファイザー社のセレコックス)と同程度に膝の痛みを和らげて機能を改善することを示した。

一方、WillcoxとGrazはリバース薬理学の普及に取り組み、アフリカの数カ国で、母乳の出を良くする薬草やHIV感染に伴う症状を改善する薬草を研究したいという科学者を訓練してきた。

2013年12月、Grazは糖尿病と高血圧に効果のある伝統薬を見つけるため、世界第7位の肥満国である太平洋諸島のパラオを訪ねた。30種の植物に対する後ろ向き治療成績研究の結果、コーヒーノキと同じアカネ科の植物であるヤエヤマアオキ(Morinda citrifolia)と体重減少の関連性や、ファレリア・ニシダイ(Phaleria nisidai)と血糖値低下の関連性が明らかになった。現在、ファレリア・ニシダイの臨床試験が行われている。先進国の糖尿病患者は数千万人に上るため、この試験が成功すれば製薬会社による天然物の探索は息を吹き返すだろう。

だが、この新しい創薬戦略を誰もが認めているわけではない。例えば、現在オックスフォード大学にいるNicholas Whiteだ。彼は伝統薬の重要性を実体験を通じて知っている。1979年、彼は2200年以上前からマラリアの治療に使われてきたクソニンジン(Artemisia annua)という薬草に関する無名の論文を中国の医学雑誌で発見した。彼は実験を経て活性物質としてアーテミシニンを突き止め、標準的な厳しい安全性試験を経て1990年代にヒトで臨床試験を行い、成功を収めた。つまり従来の創薬モデルで成功したわけで、リバース薬理学にはかなり懐疑的だ。

「少し甘いと思う」とWhiteは言う。治療師の基本的な観察はさておき、臨床試験の実施は倫理的な問題をはらむとみている。「マラリアは命に関わる感染症だ。患者に木の皮やヒキガエルを与えるのは正しいと言えるのか?」

WillcoxとGrazはこうした批判には慣れている。Willcoxが英国リバプールで開かれた英王立熱帯医学衛生学会で発表したとき、聴衆の1人がこのような臨床試験は審査を通らないだろうと指摘した。英国の倫理審査委員会のガイドラインは西欧医に西欧の標準的治療を行うことを求めているからだ。研究に費やした資金や労力を既存薬の投与に使うべきだったと言う者もいた。「この資金で2年ほどは既存薬を投与できたろうが、その後はどうするというのか?」とWillcoxは問う。

マリ国立公衆衛生研究所のDialloが共同研究を始めた理由の1つは、マリがすでに「改良型植物薬」を承認するシステムを持ち、承認薬の数と有効性を示す証拠を増やそうとしていたからだ。マリの倫理審査委員会はこの研究を認め、マリ国立公衆衛生研究所が現在、地元での製造・流通が可能な規格化されたアザミゲシ・シロップの開発に取り組んでいる。

またWillcoxとGrazは思いもよらず、ジュネーブを拠点とするメディシン・フォー・マラリア・ベンチャー社(MMV)の協力を得ることになった。MMV科学主任のTimothy Wellsは「興味深い取り組みだ」と評価する。

MMVはマラリアの治療法(ワクチンではなく)の研究を専門に行っている唯一の組織で、製薬業界のベテランスタッフを擁し、従来の創薬モデルにのっとったプロジェクトに資金を提供している。数年前、ノバルティス社(スイス・バーゼル)やグラクソ・スミスクライン社(英国ミドルセックス州ブレントフォード)などの製薬企業に資金を出し、企業が所有する600万種類以上の化合物の抗マラリア活性を試験して2万5000種類の当たりを得た。この研究によって、化合物がどのくらい強力ならさらに研究すべきかという基準を引き上げることにはなったが、新しい抗マラリア薬の発見に大きく近づけたわけではない。

キナノキ(Cinchona officinalis
キナノキの樹皮から抽出されるキニーネは、何百年も前からマラリアの治療に使われてきた。

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Wellsはアザミゲシの臨床試験のデータを見て仰天した。「アーテミシニン併用療法ほどの効果はないが、重要なのはアザミゲシはまだ最適化されていないということだ」。例えばアーテミシニンの誘導体はより溶けやすいように設計されているし、今日使われているキニーネを成分とする薬は改良を重ね効果が高まっている。

アザミゲシについても最適化を進めるべく、MMVは現在、その活性物質を特定し、体内での代謝を調べる次の段階の研究に費用を出している。MMVはコンゴ民主共和国で行われた臨床試験で抗マラリア活性を示した別の薬草についても、活性物質を突き止める研究に資金提供している。

厳しい状況でも

2013年1月、Willcoxは前年に亡くなったBengalyの家族を弔問しにミシドゥーグーを訪れた。その週、北部でフランス軍によるイスラム過激派に対する空爆が始まった。この紛争で、地元で調達できる薬がアフリカ人にとってどれだけ重要かが浮き彫りになった。2010年、世界エイズ・結核・マラリア対策基金はマラリアに関する1800万ドル(約18億円)の補助金を汚職の横行のため打ち切り、2012年には輸入業者に助成金を出して信頼できる薬を村の商店に調達するのを助けてきた同基金のマラリア治療薬購入促進機関を閉鎖すると発表した。

WillcoxとGrazはアザミゲシの奨励が公衆衛生に及ぼす効果を評価する計画だったが、政情不安のため先延ばしにした。Willcoxはあえてマリに1週間だけ滞在した。ある朝、彼が車に乗りながら窓の外を見ると、休耕地であの黄色いケシの花が風になびいていた。「あれは一時しのぎの保険のようなものだ」とWillcoxは言う。「他に何もないときに頼れる存在なのだ」。

逆転の創薬アプローチ

  • 従来の創薬は試験管で実験してから動物で試し、ヒトで評価するが、ここ数十年間で商品化された薬は少ない。
  • そこで、一部の研究者は全く異なる方法を取り始めた。伝統的な生薬による治療を受けている患者を調べ、その中から最も有望なものを研究室で分析するのだ。

翻訳:千葉啓恵

Nature ダイジェスト Vol. 11 No. 9

DOI: 10.1038/ndigest.2014.140918a