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大気を汚す樹木

Nature ダイジェスト Vol. 11 No. 7 | doi : 10.1038/ndigest.2014.140705b

揮発性有機物が思わぬ影響

交通量の多い道路沿い、ポプラやヌマミズキの街路樹の下で深呼吸したくなっても、ちょっと待った。これらの木々は酸素を吐き出しているが、別の化学物質も放出している。そうした物質が空気中で化学反応すると、肺を傷つけるオゾンを作り出す場合がある。オゾンは酸素分子の一種で、ぜんそくや気管支炎などの呼吸器疾患に関係している。

「この現象には驚いた」と、高等サステイナビリティー研究所(ドイツ)の研究者Galina Churkinaは言う。樹木の種類によっては、街路樹として植えることで、その周囲のオゾン濃度がかなり上がることがあるのだ。

樹木は、自動車や発電所と同様に、揮発性有機化合物(VOC)と呼ばれる化学物質を空気中に放出している。VOCは、日光の存在下で自動車の排ガスに含まれる窒素酸化物と反応してオゾンを形成する。

VOCは化石燃料を燃やした副産物として自動車の排気管や工場の煙突から出ているが、樹木がVOCを放出する目的は、昆虫を遠ざけたり花粉媒介者を引き寄せたりするためだと考えられている。カバノキやチューリップ、シナノキなどが出すVOCはごく少量だが、ヌマミズキやポプラ、カシ、ヤナギなどは大量のVOCを生じ、放出量の少ない樹木に比べると、その周囲のオゾン濃度が8倍になることもある。

ChurkinaらはVOC放出量の多い樹種が過剰に植えられている都市を特定してはいない。それは都市計画担当者の仕事だ。オゾンの形成には日光が必要で、生成反応は温度が高いほど活発になるので、寒冷で曇りがちな都市は、暖かく晴れの日が多い街よりも心配が少ない。

ということは、VOC放出量の多い街路樹は切ってしまうべきなのか?Churkinaの答えは「ノー」だ。放出量の最も多い木であっても散在している程度なら問題ない。

だが、シナノキはポプラよりも良いと理解しておけば、大都市でこの問題を避けるのに役立つ。例えば二酸化炭素を吸収して気温上昇を緩めたり、雨水を吸収したりするために、都市部に多くの木を植えようというプロジェクトが盛んになってきている。「そうした場合、慎重に考えて最良の樹種を選んでほしいと思う」とChurkinaは言う。彼は2014年夏にベルリン市の当局者と会う予定である。また、米国コロラド州ボールダー市もこの問題の検討を始めている。

もちろん、別の解決法もある。自動車の排ガスを減らせば、そもそも街路樹の作用を心配する必要はなくなる。

(翻訳:粟木瑞穂)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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