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長髪の物理学

Nature ダイジェスト Vol. 11 No. 6 | doi : 10.1038/ndigest.2014.140606a

自然にカールした長髪の数理モデルは、アニメ制作をさらに高度化

ドリームワークス・アニメーションの「シュレック」シリーズで、フィオナ姫はほぼ例外なく髪を後ろで束ねている。フィオナ姫がこのヘアスタイルを好む理由はファッションよりも物理学と関係がある。髪を束ねていない状態をアニメーションでリアルに描くには一連の複雑な方程式を計算する必要があるため、アニメ制作者はほどけたロングヘアよりもショートカットやアップの髪形を選ぶことが多い。同様に、大写しになる人物の髪は巻き毛ではなくストレートがほとんど。その方が三次元描画に要する計算が簡単で済むからだ。

だがアニメ制作のツールは進歩しており、リアルな巻き毛のキャラクターがドリームワークスやピクサーの作品にあふれるようになるかもしれない。最近、マサチューセッツ工科大学(米国ケンブリッジ)などの研究チームが一束の巻き毛の物理学を解きほぐし、結果をPhysical Review Lettersに発表した。「自然な巻き毛の完全な三次元形状を記述したのはこれが初めてだ」と、共著者であるPedro Reisは言う。「何しろ、巻き毛の幾何学形状は著しく非線形、つまり複雑なのです」。

Reisらは初めから巻き毛の数理モデルを作ろうとしていたわけではない。海底ケーブルや石油・ガス管、細菌の鞭毛など、細長い構造物の曲率を調べるのが目的だった。

彼らはまず中空チューブ状の型を作り、これを真っすぐ伸ばすか、直径3.2cm~1mの円筒形の物体に巻きつけた。そこにゴムのような材料を注入し、乾燥させ、さまざまな曲率の柔軟な棒を作った。それらをつり下げ、重力が棒の形状にどう影響するかを調べた。つり下げた棒の様子は巻き毛とそっくりで、それらが組み合わさってストレートやアフロなどさまざまな髪形になるのと驚くほど似ていた。

そこで、約1万1000回のコンピューターシミュレーションを実行し、つるされた細長い構造物がどんな幾何学形状を取るかを4つの性質(曲率、重さ、長さ、剛性)の関数として表す状態図を作成した。こうしたツールは最終的にアニメ制作ソフトに組み込まれる可能性があるが、そのためには頭髪全体がどう相互作用するかや、風など外力の影響をどう受けるかを調べる必要があるだろう。

このモデルは鋼管その他の巻き取り材料の曲率を計算するのにも使えそうだ。「私たちはそもそも実用的で役に立つ問題解決を目指していた」とReisは言う。「私はプロのヘアスタイリストではありません。実際、私の頭はハゲてますし」。

(翻訳:鐘田和彦)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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