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てんかん治療に大麻成分

てんかんの発作を軽減するために代替医薬を使う例が米国で増えている。問題の代替薬は大麻(Cannabis sativa)だ。米国には標準的な抗痙攣薬が効かない「難治性てんかん」の小児患者が10万人近くおり、その一部が大麻を使っている。他の標準薬が効かないときも、大麻なら子どもの発作抑制に役立つと報告する親もいる。

だが大麻を製剤化した医薬品はない。このため、小児患者の親は医療用大麻を薬局で個人的に購入するしかなく、違法に入手している例もおそらくあるだろう。

カンナビジオールに注目した新薬候補

発作の抑制に関与していると考えられる大麻の化学成分を分離すれば、この状況は一変するだろう。カンナビジオールは大麻から抽出された純粋な化合物で、成人と小児の発作を共に抑えられると期待されている。

この物質は医療用大麻のその他の効能にも関与しており、「エピディオレックス(Epidiolex)」という研究中の新薬の主な活性成分となっている。エピディオレックスはGWファーマシューティカルズ社(英国ソールズベリー)が製造しており、他にも数種類のカンナビノイド化合物を含んでいるが、ハイな気分をもたらすテトラヒドロカンナビノールは除外してある。

認可済みのいくつかの発作治療薬と同様、カンナビジオールが抗痙攣薬として機能するメカニズムは正確には分かっていない。だが生理学的な基礎がどうであれ、カンナビジオールは効くようだ。動物実験と成人による予備的な研究は、カンナビジオールが発作をかなり抑え、耐性が高く安全であることを示している。

現在、難治性てんかんの小児患者を対象にカンナビジオールの効果を試す正式な研究が始まろうとしている。1年間の臨床試験で、標準的な発作治療薬が効かない小児150人のてんかん性活動を抑えられるかどうかを検証する予定だ。エピディオレックスの効果が証明されれば、大麻が将来の医薬品開発に利用できそうな化合物の宝庫かもしれないことを示す新たな証拠となるだろう。

翻訳:粟木瑞穂

Nature ダイジェスト Vol. 11 No. 6

DOI: 10.1038/ndigest.2014.140606b