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鳥のV字編隊飛行は、やはり合理的だった!

Nature ダイジェスト Vol. 11 No. 3 | doi : 10.1038/ndigest.2014.140306

原文:Nature (2014-01-15) | doi: 10.1038/nature.2014.14537 | Precision formation flight astounds scientists

Chelsea Wald

渡り鳥の群れが、驚異的ともいえる巧みな飛行制御能力で省エネ飛行を成し遂げていることが明らかになった。

Credit: THINKSTOCK

編隊を組んで飛行する渡り鳥の群れは、エネルギー消費を最小限にとどめるために、従来考えられていたよりはるかに巧妙に羽ばたきを調整していることが分かった。

2011年、超軽量飛行機に導かれ越冬地へと向かうホオアカトキ(Geronticus eremita)の群れは、見事なV字形の編隊を形成していた。この人工的な渡りは、ホオアカトキの野生復帰計画の一環で行われたもの。群れを構成するのは飼育下で繁殖された個体だ。今回、各個体の背中に位置と羽ばたきを詳細に記録するデータロガーを取り付けることで、鳥のV字隊形が空気力学を利用したエネルギー節約法であることを裏付ける、これまでで最も強力な実験的証拠が得られた。

渡り鳥に広く見られるV字編隊飛行が後続の鳥のエネルギー節約に役立っている可能性は、以前から複数の理論モデルで示されていたが、それは一方で、省エネ飛行の実現には隊形の形成が極めて精密でなければならないことも示唆していた。ロンドン大学ロイヤル・ヴェテリナリー・カレッジ(英国ハットフィールド)の生態生理学者Steven Portugalによると、多くの科学者は、飛行中の鳥にそんな芸当は無理だと考えていたという。

V字編隊の空気力学を最大限に活用するには、各鳥が、先行する鳥の翼端で生じる空気の渦の上向き部分に自分の翼を持っていく必要がある。ところが、先行する鳥は常に羽ばたいているため、その渦も翼の動きに合わせて上下する。従って、後続の鳥が先行する鳥の吹き上げ気流に乗り続けるには、的確な位置取りだけでなく、羽ばたきのタイミングも正確に合わせなければならない。しかもそのタイミングは、個体間の距離で変化する。こうした調節がいかに複雑かを知った科学者たちは、V字編隊飛行が省エネ目的ではなく、捕食者から身を守るため、あるいは、渡りに慣れた個体を群れの前方に配置させるためではないかと結論付けた。

V字を追う

Portugalらは今回、渡り鳥のV字編隊が空気力学に基づいているという仮説の検証を試み、その結果をNature 2014年1月16日号399ページで報告した1。この研究では、Portugalらが数年がかりで開発した特別なデータロガーが使われた。このデータロガーは、羽ばたきの回数を加速度計で計測し、それに同期させたGPS(全地球測位システム)データを毎秒5回記録する。しかし、この研究にはまだ重要な問題が1つ残っていた。繰り返し捕獲できるほど人間に慣れていながら自由飛行を行う鳥の群れを、一体どうすれば確保できるのか?

答えは、オーストリアのとある保護計画にあった。欧州委員会(EC)から2013年に大型の活動資金を獲得したばかりの、生物学者Johannes Fritz率いるNGO団体「Förderverein Waldrappteam」が、欧州では約400年前に絶滅してしまったホオアカトキの保護と野生復帰に取り組んでいたのである。同団体は2003年以来、飼育下で繁殖・人工保育したホオアカトキの個体を人間の里親の後を追うように訓練し、超軽量飛行機を使って、オーストリアやドイツの繁殖地からイタリアの越冬地までの渡りを教えてきた。2011年8月、Portugalは、彼の研究に賛同したFritzの誘いを受け、14羽のホオアカトキの若鳥に独自開発のデータロガーを取り付けた。

Portugalは、小型機が先導した36日間に及ぶ渡りで3日分の飛行データを収集し、そこから7分間のデータを選出して分析を行った。その結果、鳥の群れの編隊飛行が空気力学的な理論予測と合致していることが判明したのである。「鳥たちは、自ら最適な位置を選んで飛び、最適なタイミングで羽ばたいていたのです」とPortugalは語る。

ホオアカトキの渡りには、他にも興味深い事実が隠されていた。群れの個体が頻繁に、先行する鳥の真後ろなど、一見最適ではない位置に移動して、吹き下ろし気流を避けるように羽ばたきを調節していることも分かったのだ。こうした個体が省エネ効果のあるV字編隊を離れるのか理由は不明だと、マックス・プランク鳥類学研究所(ドイツ・ラドルフツェル)の行動生態学者Martin Wikelskiは言う。水平位置と垂直位置を同時測定できる高度なGPS技術があればその答えが得られるかもしれない、と話すのは、ノースカロライナ大学チャペルヒル校(米国)の生物学者Ty Hedrickだ。

その理由が何であれ、ホオアカトキの気流を感じてそれに反応する能力が、研究者たちの予想以上に優れていたのは明らかだ。「鳥たちは互いに、仲間の鳥がどこにいて何をしているのか、本当によく理解しています。何よりもそのことに深く感心しました」とPortugalは話す。

(翻訳:小林盛方)

参考文献

  1. Portugal, S. J. et al. Nature http://dx.doi.org/10.1038/nature12939 (2014).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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