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Nature の新コーナー『Toolbox』

「仕事に必須の道具は何か」と尋ねられた科学者のほとんどは、まずハードウエアを思い浮かべることでしょう。顕微鏡、望遠鏡、質量分析計、ゲノムシーケンサー、試験管といった具合です。しかし、データを操る研究者たちは、Excel、ChemDraw、MATLABなどのソフトウエア、そして、その作成に用いられるプログラミング言語、例えば、Python、R、SQLを挙げることでしょう。データの解析や可視化、ファイルの共有、共同研究、論文執筆、論文発表、文献の検索、単なる研究結果の整理……いずれの場面においても、こうした道具は、現代の研究に欠かせません。そして近年、研究者に的を絞って設計されたソフトウエア、ウェブサイトやアプリが充実してきています。

Nature では、この成長分野の最新情報をお届けする新コーナー『Toolbox』を2014年9月4日号からスタートしました。Toolboxには、仕事の効率アップや、新たな方法の導入に役立つソフトウエアツールとウェブサイトに関する Nature の記事が集められています。また、オープンデータ、市民科学、クラウドファンディングなど広義のオンライン研究に関する Nature の論文や記事も扱います。Toolboxは印刷版では月1回の掲載ですが、オンライン版(nature.com/toolbox)でもご覧いただけます。

今や、毎週のように、研究の生産性向上をうたった新しいウェブサイトが立ち上がり、独自のアイデアで科学者の仕事の円滑化を図ることを目的とする企業が設立されています。Nature のToolboxは、ウェブサイトとプログラムの迷路に困惑する読者を導き、それらの類似点と相違点を論じることを目的としています(ただし、記事はあくまでもコミュニティー主導で作成された情報資源であり、大量のデータやプログラムを取り扱うさまざまな分野の科学者が最も頻繁に利用するソフトウエアについての考え方を示したものです)。

例えば、2014年9月4日号のToolbox(129ページ)では、「リコメンデーション・エンジン」の登場という最新動向を検討しています。これは、個々の科学者が洪水のように押し寄せる文献から関係のある論文や情報を選別できるようにするソフトウエアのことです。他にも、対話型計算システムのプロジェクト“iPython”と科学者向けの応用例を調査した記事や、研究論文の共同執筆に役立つことをうたったウェブサイトを検討した記事なども掲載しています。

わずかな数のソフトウエアを理解するだけで、研究者の日常生活は効率の良いものになります。例えば、Gitのようなバージョン管理システム(ファイルの変更記録を作成し、過去の論文と作成中の論文を呼び出して分析できる)を基盤として構築されたGitHubのようなウェブサービスは、複数の研究者が共同で研究論文を執筆する際に役立ち、明快で再現可能なデータ解析を確実に行うのに役立ちます。

そうしたプログラミングツールは、Nature の読者の中では、データサイエンティスト、バイオインフォマティクス研究者、気候モデル研究者の必需品となっています。しかし、プログラマーでない人々は、プログラミングツールの専門用語に当惑することがあります。それに加え、数多くのソフトウエアパッケージから自分に必要なツールを選び出すことが難しい場合もあります。Toolboxのウェブサイトでは、そうした問題の解決の一助となるよう、特定のソフトウエア(市販品とフリーソフト)の推薦記事を科学者の間で共有できるようにしています。

Nature は、Toolboxを通して、科学者の皆さんがデジタルツールの最新情報を常に把握できるようにサポートしていきます。

Nature ダイジェスト Vol. 11 No. 12

DOI: 10.1038/ndigest.2014.141217

原文

The digital toolbox
  • Nature (2014-09-04) | DOI: 10.1038/513006b