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オープンアクセス誌要覧サイトが、登録要件を厳格化

2003年にDOAJを創設したLars Bjørnshauge。

MARINA MARTÍNEZ-LÓPEZ

2003年、Lars Bjørnshaugeはオープンアクセス誌(OA誌)を索引登録する ウェブサイトDOAJ(Directory of Open Access Journals)を創設した。その後の10年間でオープンアクセス出版市場は爆発的に拡大し、わずか300誌の登録でスタートしたDOAJもそれに乗り急成長を遂げ、2013年末には約1万誌が登録されるに至った。そのDOAJは現在、大きな問題を抱えている。新規登録誌の開拓ではなく、怪しげな出版元の排除が必要な状況なのだ。

品質管理チェックに対する批判を受けたDOAJは、これまでより厳しい登録基準を設定し、現在、索引登録されている全てのOA誌に対して新しい基準に基づいた再申請を求めている。その狙いは、「略奪目的のOA誌」の排除にある。つまり、研究論文のオープンアクセス出版を行うとうたい、多くの場合に掲載料を徴収するにもかかわらず、実際には全くの詐欺、あるいは、必要最低限のピアレビュー(査読)や永続的なアーカイブ作成などの研究者が期待するサービスを提供しないOA誌を取り除くための策である。「いかがわしい出版社をめぐって大きな騒ぎがあったことは、誰もが知っています」とBjørnshaugeは話す。

新基準による再申請で得られると期待されているものが他にもある。一定の基準を満たした「優良OA誌」のリストで、これまでで最大級のホワイトリストになる。研究助成機関や図書館員、研究者がOA誌に関する情報を調べ、データベースのメタデータを自らのカタログに組み込む際に、DOAJのホワイトリストが最も有用な手段となることが期待されている。なおDOAJは、最も高い基準を満たすOA誌(全体の約10~15%と想定されている)に最優良事例の認定を与えるとしている。

Bjørnshauge によれば、DOAJには月間60万ページビューのアクセスがあり、品質の選別がなされているものと以前から考えられていた。ところが、2014年7月に米国カリフォルニア州リバモアで図書館システムアナリストを務めていたWalt Crawfordが発表した論文(go.nature.com/z524co参照)で、DOAJには、コロラド大学(米国デンバー)の図書館員Jeffrey Beallがまとめた「略奪目的と思われるOA誌のブラックリスト」(Nature 2013年3月28日号433~435ページ参照)に列挙されている9200誌のうちの約900誌が登録されていることが示された。また2013年には、ジャーナリストのJohn Bohannonが「明白な不備のある論文を投稿する」というおとり捜査的手法を用いて約300のOA誌を調査した結果、DOAJに登録されているものでは73誌がこの論文を掲載受理したため、Bohannon は、少なくとも73誌が略奪目的であることが疑われると結論した(J. Bohannon Science 342, 60-65; 2013)。その後、DOAJは、これらのOA誌を索引から削除した。

DOAJが登録基準の厳格化を発案したのは数年前のことだった、と現在DOAJを運営する非営利企業IS4OA社の共同設立者Alma Swanは話す(かつてDOAJは、スウェーデンにあるルンド大学によって運営されていた)。「必要最低限の品質水準を満たしているOA誌がどれなのか示すことが必要なのです」と彼女は言う。

2014年5月以降、DOAJに新規登録を申請するOA誌は、これまでより厳しい申請書を提出しなければならなくなった。この申請書には、再申請基準の基盤となる50項目以上の質問が記載されている。ここには、OA誌のデジタルアーカイブ作成方針、編集委員会、コンテンツのライセンス供与に関する質問も含まれている。「現行リストに登録されたOA誌の約10%は再申請が認められない可能性が高いと考えています」とBjørnshaugeは話す。

オープンアクセス出版のヒンダウィ社(エジプト・カイロ)の最高戦略責任者Paul Petersは、DOAJの新基準が「極めて重要な意味を持つ」と考えている。「学術研究者は、各OA誌が最優良事例を実践しているかどうかを判断するための手段を必要としています。それに応える信頼できて拡張可能な仕組みがDOAJによって提供されると私は確信しています」とPetersは話す。

DOAJのホワイトリストが、信頼できるOA誌の卓越した索引となるかどうかは不透明だ。DOAJの信頼性がすでに損なわれており、新基準は「不十分で、時機を失している」とBeallは言う。それに、もし出版社がサービス内容に関して虚偽の回答をしていたとしても、DOAJにはそれを見破る術がないのでは、とも考えている。またBeallは、多くの研究者や大学がOA誌の質を判断する際に重要視するのはむしろ、DOAJのリストではなくエルゼビア社のスコーパスのようなメジャーな引用データベースに索引登録されているかどうかになるだろう、と指摘する。

DOAJでは、約30名のボランティアのアソシエートエディター(主に図書館員と博士課程の学生)からなる少人数の集団が各出版社の再申請書に記載された情報のチェックを行い、その後マネージングエディターが2次チェックを行う、とBjørnshaugeは説明する。また、Bjørnshaugeは、Beallが行ったような「オープンアクセス出版社のブラックリストを公表すること」に極めて懐疑的だ(Crawfordの研究によれば、Beallが作成したOA誌のリストは一見膨大だが、そこには実体のないもの、休眠中のもの、出版された論文数が年間で20編を下回るものが多く含まれていることが分かっており、Beallの主張ほど問題が深刻でないことが示唆されている)。

ホワイトリストがあれば、研究者が低水準のOA誌に引っ掛かることはなくなるのだろうか。Beallは、そう思っていない。「研究者を詐欺から守る上で、ホワイトリストを用いる方法が役立つという証拠はありません。悪質なオープンアクセス出版社は今も猛烈な勢いで増え続けています」。

翻訳:菊川要

Nature ダイジェスト Vol. 11 No. 11

DOI: 10.1038/ndigest.2014.141114

原文

Open-access website gets tough
  • Nature (2014-08-07) | DOI: 10.1038/512017a
  • Richard Van Noorden