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誘発地震

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少し前まで、米国オクラホマ州で地震はまれだった。今やそうではない。2009年にはマグニチュード3以上の地震が20回あった。2008年以来、同州の地震活動は40倍に増えている。その原因は? Scienceに報告された研究によると、人間だ。この研究は地質学者がかねて疑ってきたことを確証した。つまり石油・ガス掘削企業による地下への水の廃棄が地震を引き起こすのである。

オクラホマ州では、地下から石油や天然ガスを抽出するのに伴って毎月何千tもの廃水が生じる。各社はこの廃水を井戸に注入して地下に捨てており、これが地下水圧を上げて断層にストレスを加える可能性がある。

「通常、地震はプレート運動によって自然に起こる」とコーネル大学(米国ニューヨーク州イサカ)の地球物理学者でこの研究論文の筆頭著者であるKatie Keranenは言う。「だが大量の水を地下に注入すると地震のサイクルに影響が生じ得ます」。

Keranenらは水文地質学モデルと地震活動データを組み合わせて解析し、オクラホマシティーの南東にある4つの廃水井戸が「ジョーンズ群発地震」の原因らしいと結論付けた。この群発地震は2008〜2013年に米国の中部と東部で発生した地震の20%を占める。研究チームはまた、廃水注入が井戸から30kmも離れた地点で地震を誘発したことを見いだした。その影響は従来の想定をはるかに超えていたのだ。

「誘発地震」という術語は採鉱やダム、地下核実験、廃水注入などによって引き起こされる地震を示すのに使われてきた。石油・天然ガスの採掘技術が広がり、廃水注入と地震を結び付ける研究結果が増えるにつれ、この用語は目を離せないものになりそうだ。

翻訳:日経サイエンス編集部

Nature ダイジェスト Vol. 11 No. 10

DOI: 10.1038/ndigest.2014.141006b