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3種の初期人類は同一種だったのか!?

Nature ダイジェスト Vol. 11 No. 1 | doi : 10.1038/ndigest.2014.140102

原文:Nature (2013-10-17) | doi: 10.1038/nature.2013.13972 | Skull suggests three early human species were one

Sid Perkins

グルジアで出土した、単一集団とみられる約180万年前の頭蓋骨5点のうち、1つは飛び抜けて面長であった。この集団内に見られる個体差から、現在3種に分類されている初期人類は同一種にまとめられる可能性がある。

Credit: GURAM BUMBIASHVILI, GEORGIAN NATIONAL MUSEUM

これまでに発見された初期人類の頭蓋骨の中でも極めて完全性が高いものの1つについての分析結果が報告された1。その結果から、3種と考えられてきたヒト属は、実は同一種である可能性が示唆され、初期人類の系統分類に関する論争を巻き起こしている。

今回、グルジア・ドマニシで発掘された約180万年前の化石頭蓋骨を分析し、その解剖学的特徴を、同じ発掘現場から出土した別の4点の頭蓋骨と比較した結果、これら5点の解剖学的特徴には幅広い差が見られることが分かった。このことから、当時世界各地に存在していたとされてきた3種のヒト属、すなわちHomo habilisHomo rudolfensisHomo erectusが、同一種の個体差の範囲に収まる可能性があるというのだ。

新たに記載されたその頭蓋骨(一般には「スカル・ファイブ(skull 5)」と呼ばれている:写真)が発掘されたのは、2005年のことだった。その5年前に2mほど離れた場所で発見された下顎骨とこの頭蓋骨とを合わせると、「この年代の成人の頭蓋骨としては最も完全性の高いものになったのです」と話すのは、人類学研究所博物館(スイス・チューリッヒ)の古人類学者で、今回の研究チームに名を連ねるMarcia Ponce de Leónだ。

skull 5の脳頭蓋容量はわずか546cm3で、これは現生人類の3分の1程度だと、Ponce de Leónは指摘する。ただ、脳の容量はそれほど大きくないにもかかわらず、顔の大きさは、この遺跡で見つかったH. erectusのものとされている別の4点の頭蓋骨と比べると大きく、顎が前方に突き出ている。

Ponce de Leónと同じ研究所の神経生物学者で、この研究チームのメンバーであるChristoph Zollikoferによれば、1つの遺跡から頭蓋骨が5点も出土したことで、同一の種族と考えられる集団内に見られるばらつきを研究する、またとない機会が得られたという。この場所で発掘された頭蓋骨5点の持ち主がそれぞれ生存した時期は、おそらく2万年の年代内に収まるだろう、とZollikoferは推測する。

このドマニシの5点の頭蓋骨は、それぞれがかなり違った特徴を持つため、「別々の種として発表したくなってしまいます」とZollikoferは話す。しかし、それぞれの個体は、同じ地質学的年代の同じ場所に由来していることが分かっており、基本的には単一種の単一集団のものである可能性が高い。

研究チームの統計データもまた、5点の頭蓋骨が単一種であることを支持する結果だった。例えば、skull 5の容積は、ドマニシで発掘された最大の頭蓋骨の75%程度で、これは大きな差にみえる。しかしこの差は、現生人類の間やチンパンジーの間に見られる変動の範囲内である。さらにZollikoferによれば、そのばらつきは当時の世界中の全ヒト属に見られる変動の範囲にも収まっているという。

ケンブリッジ大学(英国)の古人類学者Robert Foleyは、「多くの頭蓋骨の発見が、必ずしも物事をはっきりさせてくれるわけではありません」と話す。ただし、今回の分析結果は、初期のヒト属の解剖学的ばらつきの傾向や程度に関する科学者の考え方を変えるはずだ、とも語る。

もし、約180万年前に地球上に存在していたその3種のヒト属が同一種ということになれば、H. habilisH. ruldolfensisは、H. erectusに組み込まれるだろうと、Zollikoferは考えている。ドマニシの頭蓋骨がH. erectusとして知られるものに似ているためだ。

しかし、マックス・プランク進化人類学研究所(ドイツ・ライプツィッヒ)の古生物学者Fred Spoorは、アフリカからインドネシアにわたる広範な地域に存在していたその3種をH. erectusとしてまとめることは科学的に妥当ではないと考えている。

Spoorによれば、今回の研究ではおおまかな頭蓋骨形状の統計的解析法を用いているが、この手法は、種と種とを区別するのに必ずしも適していないという。脳頭蓋の高さや眼窩の直径など、具体的な解剖学的形質を分析するべきだったと、Spoorは指摘する。これらの特徴は、種の同定と進化の系統樹の構築に広く利用されており、容易に定量可能なものだ。

(翻訳:小林盛方)

参考文献

  1. Lordkipanidze, D. et al. Science 342, 326–331 (2013).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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