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細菌流の変身の術

Nature ダイジェスト Vol. 11 No. 1 | doi : 10.1038/ndigest.2014.140106b

無害な細菌が、悪役に変わるメカニズム

細菌は至るところにいる。体内にもいる。無害なもの、有益なもの、そしてもちろん一部は病気を引き起こす。だがその他の菌、例えばありふれた肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonia)は、この3つには分類できない。善玉から悪玉へと急に変身するのだ。

肺炎連鎖球菌は通常、人々の鼻腔におとなしくすみついている。だが時々、この細菌が危険を感じると自らを守ろうとして体内の別の場所に散らばり、人間を病気にする。こうして肺炎(世界的には子どもの死因のトップ)などの重い病気を引き起こすが、「基本的には偶発的な病原菌だ」と、バッファロー大学(米国ニューヨーク州)のAnders Hakanssonは言う。

インフルエンザとその後の肺炎連鎖球菌感染症に強い相関があることが示されてきたが、この細菌が悪玉に変わるメカニズムはいまだにはっきりしていない。そこでHakanssonらは、そのメカニズムを調べることにした。

人間のシグナルを細菌が傍受

その結果、インフルエンザに対する人間の免疫応答が引き金となって、細菌に変化が起こるらしいことが分かった。体がインフルエンザウイルスに応答して体温を上げ、ノルアドレナリンなどのストレスホルモンを放出すると、この細菌はそうした環境変化に反応する。コロニーから散らばった細菌は、別の場所に広がり、遺伝子の発現パターンが変わって呼吸器の細胞に致命的な影響を与えるようになるのだと、研究チームはmBioに報告した。

肺炎連鎖球菌がホルモンなどヒト細胞からのSOS信号を傍受できるのは「インター・キングダム・シグナリング(界間シグナル伝達)」の例だ。連鎖球菌の場合、細菌が動物界の生物のシグナルを聞いている。界間シグナル伝達は近年、重要な生物学メカニズムと見なされるようになってきた。

肺炎連鎖球菌はもともと人間にすみついている菌なので、人体内部の環境変化を読み取る方法を進化させたのは理にかなっていると、Hakanssonは言う。「私たち人間の体は、この細菌にとっての生態学的ニッチなのです」。

(翻訳:粟木瑞穂)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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