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侵略アリどうしの戦い

Nature ダイジェスト Vol. 10 No. 6 | doi : 10.1038/ndigest.2013.130605a

オオハリアリが米国に侵入し、先着アリとの戦闘を開始

アルゼンチンアリは南極以外のすべての大陸に進出し、数の多さと猛烈な攻撃性で在来種のアリを圧倒している。だが最近、この侵略者は米国で強力なライバルに出会ったようだ。それが、アジアからやってきたオオハリアリだ。

世界で1万2400種以上いるアリのうち、侵略性の種はほんの一握りにすぎない。しかし、それが大きな影響を及ぼす。侵略アリは、その土地で重要な役割を果たしている在来種を攻撃して、駆逐してしまうからだ。在来アリは庭師のように土壌を耕して種をまくが、侵略アリはそうした仕事をしないのが普通だ。

アジアとアルゼンチンからの侵略アリどうしの戦いは、偶然に見つかった。数年前、ノースカロライナ州立大学の昆虫学の研究チームは、同州モリスビルのオフィスパークでアルゼンチンアリの巣のネットワークを追跡していた。当時大学院生だったElenor Spicer Riceは、オオハリアリの巣をいくつか見つけ、「アルゼンチンアリの縄張りの中に別種のアリが巣を作れるなんて、とても異様だと感じました」。アルゼンチンアリは通常、ライバルを容赦しないからだ。さらに異様だったのは、オオハリアリがアルゼンチンアリを追い返していたことだった。

数で劣るオオハリアリは、どうやって足がかりを得たのか。不思議に思って耐寒テスト実験をしたところ、オオハリアリは、熱帯性のアルゼンチンアリよりもノースカロライナ州の温暖な気候にうまく適応しているらしいことがわかった。オオハリアリは3月には冬場の活動停止状態から抜け出すのに対し、アルゼンチンアリは4月末から5月初めにならないと活動を再開しない(論文はPLOS ONEの2月8日号)。とすると、オオハリアリがノースカロライナ州での戦いに勝利しているのは、単にここがアルゼンチンアリの生息の北限であるからだけかもしれない。

オオハリアリの進出は、在来種のアリだけでなく、人間にとっても厄介だ。刺されると激痛がはしり、敏感な人だと致命的なアレルギー反応を引き起こしかねないからだ。「オオハリアリの毒にアレルギーがある人は、ハチ毒アレルギーのある人よりも多いのです」とSpicer Riceは言う。すでにオオハリアリは、米国東海岸のニューヨークから西海岸のワシントン州まで各地で見つかっている。侵略アリに有利な環境条件が生まれる中、侵略者どうしの戦いも続くだろう。

(翻訳:粟木瑞穂)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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