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3つ目のバンアレン帯が出現

Nature ダイジェスト Vol. 10 No. 5 | doi : 10.1038/ndigest.2013.130504

原文:Nature (2013-02-28) | doi: 10.1038/nature.2013.12529 | Ephemeral third ring of radiation makes appearance around Earth

Ron Cowen

NASAの観測衛星が、3番目のバンアレン帯の出現をとらえた。それは太陽からの衝撃波が消し去るまで、数週間持続した。

2012年8月、米航空宇宙局(NASA)は地球の周りのバンアレン帯(放射線帯)を詳しく調べるため、2機の観測衛星を打ち上げた。バンアレン帯は地球を環状に取り巻いており、そこには高エネルギーの荷電粒子が多量に存在する。バンアレン帯は55年前の発見以来、内外の2つの環からなると考えられていたが、今回、2012年9月に、意外にも一時的に環が3つ存在したことが明らかになった。

2機のバンアレン帯観測衛星は、地球を取り巻くバンアレン帯の中を通過する軌道を回っている。この図は、ドーナツ型のバンアレン帯とその断面を示している。

Credit: NASA

バンアレン帯は、陽子や電子などの高速の荷電粒子が、地球の磁場によって2つのドーナツ型の環に集まったものと考えられている。1958年、米国の物理学者James Van Allenが、人工衛星を使って最初に発見した。外側の環(外帯)は地表から約1万~6万kmの距離にあり、その内側、地表から約100~1万kmのところに、さらにエネルギーの高い粒子の環(内帯)がある。バンアレン帯は半世紀前に発見されたときにもこのような構造をしていたし、今回、2機の観測衛星が2012年9月1日に観測を始めたときも、同じ構造をしていた。

しかし、そのわずか2日後、観測衛星搭載の望遠鏡による観測で、内側の環と、荷電粒子の流量が大きく減少して弱くなった外側の環との間に、荷電粒子の流量の大きな、もう1つの薄い環が現れたことがわかった。研究を行ったコロラド大学大気宇宙物理学研究所(米国ボールダー)の宇宙物理学者Daniel Bakerは、「それはあまりにも予想外の出来事だったので、私たちは当初、装置に何か問題が起こったのではないかと考えました」と振り返る。

しかし、この新しい環は消えずに持続した。Bakerらの研究チームは、新たな環は惑星間衝撃波によって作られたとみている。惑星間衝撃波は、太陽から噴き出す太陽風粒子の衝撃波のことで、別の宇宙観測機で検出された。「惑星間衝撃波が外側の環の大部分を流し去り、その残りを2つの環に分割したのでしょう」とBakerは話す。

中間の環はほぼ9月いっぱい持続し、一方、外側の環の荷電粒子の流量は、増減し続けた。しかし、10月1日、以前のものよりもエネルギーが高い別の惑星間衝撃波がやって来て、外側と中間の環の両方を完全に消し去り、内側のバンアレン帯のみが残った。「さらにその7~8日後、3番目の衝撃波が来て、なぜかは不明ですが、教科書に描かれているような、2つの環からなる元の構造が復活したのです。10月9日に観測衛星が観測したデータから、外側の環全体が突然、再び現れ、中間の環は消えたことがわかりました」とBakerは説明する。

今回の発見はScience誌オンライン速報版に2013年2月28日に報告された1。Bakerは、「今回の発見は、太陽での爆発現象がバンアレン帯の構造を作り出す強力な原動力であり、このような現象がありふれたものである可能性を示しています。特に、11年の太陽周期のピークに近い、今のような時期には、よくあることなのかもしれません」と話す。「しかし、外側のバンアレン帯の劇的な作り替えのメカニズムの詳細と、1か月間にわたって持続した中間の環ができた位置に関しては、現在の理論では説明できません」と指摘する。

今回の研究チームに加わっていなかった、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(米国)の地球物理学者Yuri Shpritsは、「3つの環からなる構造が生じる仕組みを解明する仕事が、世界中の理論研究者や数値モデル作成者にゆだねられました」と話している。

(翻訳:新庄直樹)

参考文献

  1. Baker, D. N. et al. Science http://dx.doi.org/10.1126/science.1233518 (2013).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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