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火星にはかつて生命の居住環境が存在した

Nature ダイジェスト Vol. 10 No. 5 | doi : 10.1038/ndigest.2013.130502

原文:Nature (2013-03-12) | doi: 10.1038/nature.2013.12597 | Mars rover finds evidence of ancient habitability

Alexandra Witze

火星探査ローバー「キュリオシティー」が 初めて掘削した岩石サンプルを分析した結果、水中で形成された粘土を発見した。

火星にはかつて生命が存在できる環境があったのだろうか? この謎を探るためにNASAが火星に送り込んだ探査ローバー「キュリオシティー」(2012年10月号7ページ参照)が、探していた証拠を発見した。

直径1.6cmのドリル孔から採取されたサンプルには、塩分を含む水の中で形成された鉱物が含まれていた。

Credit: NASA/JPL-Caltech/Cornell/MSSS

化学分析の結果、ローバーが岩石を掘削して最初に採取した灰色がかった粉末に、水中で形成された粘土鉱物が含まれていることが明らかになったのだ。その水は、わずかに塩分を含んでいて、生物が耐えられないほどの酸性でもアルカリ性でもなかったようだ。

カリフォルニア工科大学(米国パサデナ)の惑星地質学者で、キュリオシティーのプロジェクト・サイエンティストであるJohn Grotzingerは、「あなたが当時の火星にいて、近くにこの水があったら、飲むことができたでしょう」と言う。彼は、NASAのほかの研究者らとともに3月12日に記者会見を開き、今回の知見について発表を行った。

火星に粘土鉱物があることは、これまでのミッションによりすでに確認されていた。また、キュリオシティー自体も、かつて火星の表面を水が流れていたことを示唆する証拠を発見している。しかし今回、キュリオシティーが「ジョン・クライン」という愛称(2011年に死去したマーズ・サイエンス・ラボラトリーの副プロジェクト・マネジャーにちなんで名付けられた)の岩石から採取し、テストを行ったひとつまみの粉末が、水の存在下で、生物に無害なpH環境において粘土が形成されたことを示唆する、最初の確固たる証拠となった。

NASAエイムズ研究センター(米国カリフォルニア州モフェットフィールド)に所属するキュリオシティーの化学・鉱物学実験装置(CheMin)の主任研究員であるDavid Blakeは、「ここは、我々が記述し、記録してきたさまざまな場所の中で、唯一、生物が確実に居住できる環境があったといえる場所なのです」と言う。

CheMinによるX線分析の結果は、掘削された岩石の大部分が、火成鉱物(長石、輝石、橄欖石、磁鉄鉱など)からできていることを示していた。ただ、この岩石の少なくとも20%は、水の存在下で形成される粘土鉱物(スメクタイトなど)からできていた。以前、火星探査ローバー「オポチュニティー」が別の場所の岩石中に発見した鉄塩は、生物が耐えられないレベルの酸性環境で形成されたことを示唆していたが、今回、キュリオシティーが調べた岩石に含まれる塩類(例えば岩塩)は、生物が耐えられる環境で形成されたことを示唆しているとBlakeは言う。

同じくキュリオシティーに搭載されている火星サンプル分析装置(SAM)は、数分の1グラムの粉末を加熱して、放出されるガスを分析した。SAMの主任研究員であるNASAゴダード宇宙飛行センター(米国メリーランド州グリーンベルト)のPaul Mahaffyによると、サンプルから水が放出される温度は比較的高く、これは粘土鉱物の特徴であり、CheMinで得られた知見のよい裏付けだという。

今回の発見により、6輪車のキュリオシティーがゲール・クレーターの底に滞在する期間は長くなるだろうとGrotzingerは言う。なお2月28日には、キュリオシティーのメインコンピューターに不具合が生じたため、予備コンピューターへと切り替えられた。しかし、復旧のための初期の作業には遅れが出た。3月初旬に大規模な太陽嵐が火星を襲い、ミッションマネジャーらがキュリオシティーを保護するためにこれをシャットダウンしたからだ。

科学オペレーションは近日中に再開する予定であるが、4月には再び中断する。この時期には、地球から見た火星が太陽の背後に隠れてしまい、キュリオシティーと通信できなくなるからだ。その後、通信が再開したら、キュリオシティーは再び「ジョン・クライン」に孔をあける作業をし、それから旅支度をして、最終目的地である標高5kmのアイオリス山の頂上をめざして10kmのドライブに出発する予定である、とGrotzingerは言う。

(翻訳:三枝小夜子)

編集部註:その後キュリオシティーは、3月16日にもトラブルにより活動を停止したが、3月25日に活動を再開した。現在は、本文にある理由で活動を休止している。

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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