Editorial

遅ればせながら、論文査読者への顕彰が始まった

2012年にNatureは、「3人の著者が共同第二著者であることを論文の脚注で明示したい」という風変わりな要請を受けた。我々は拒否したが、それは、好むと好まざるとにかかわらず、「第一著者と最終著者の数はそれぞれ3人以内」というのがNatureの基本方針だからだ。

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確かに、著者の並び順にこだわる研究分野があるのは事実で、問題の要請は生物学分野の研究者からだった。それにしても、「3人の共同第二著者」とは何とも不細工な表示法だ。それによって著者間で争いが生じるのは目に見えている。

ここ数年、Natureとその姉妹誌では、各著者の貢献度を論文末尾に明記するよう要請してきた。ただし、この表記法はシステマティックではなく、メタデータが付随していないため、検索性を高めることができていない。この方法は、各論文における著者の貢献度を明らかにするという点ではうまくいっているが、貢献度を蓄積して、個々の研究者について、その技能と経験に関するデータベースを構築するという課題は残されたままだ。

それが達成できれば、例えばジョン・スミスがある特定の技術を開発し、それが複数の分野で応用されたといったことが、高い透明度で明らかにできる。それもあって、Natureでは、著者の貢献度表記法について、その有用性と透明性を高める方法の検討を進めている。

当然のことだが、どのジョン・スミスの貢献なのかがわかれば便利である。この点で、2012年のORCID(Open Researcher and Contributor ID)制度の創設は歓迎すべきことだ。ORCIDの中核的機能は、ひとりひとりの研究者に固有番号とウェブページを割り当てることであり、それによって一意的な識別関係を作り出し、あいまい性を解消している。そのウェブページでは、研究者が、自らの貢献内容、例えば過去に出版した論文や、将来的な能力を示す研究助成金と特許などについて、記録することができる。

Natureとその姉妹誌への論文執筆者は、Natureの論文投稿・追跡システムのアカウントとORCIDをリンクさせることができる。さらにNatureは、掲載論文に著者のORCIDを記載する計画を立てている。読者は、https://orcid.org/registerでORCIDの登録ができる(Nature 2012年5月31日号564ページ、本誌2012年8月号13ページ参照)。

こうした公的な活動と対照的なものに「査読」がある。査読は、研究助成機関や学術論文誌のために科学者が行う不可欠の貢献活動でありながら、私的な活動となる面が強い。査読には多大な価値があり、顕彰に値するのはほとんど自明である。査読では、投稿論文について表面的な妥当性を調べることはできるが、より深遠な真実性の検証はできない(ことになっている)。

査読には相当な時間と労力が求められる。実際、刺激あるいは懸念を感じた査読者が、その作業に何日も時間をかけることも少なくない。そうした献身的努力に対して、もっときちんと応えなければならない。

そのためにNatureとその姉妹誌は、2つの制度を導入している。それは、Natureとその姉妹誌への投稿論文を1年間に3編以上査読した人に対して、①その貢献に関する認定書が送られること、②Natureとその姉妹誌の中のいずれか1誌を無料定期購読できることである。

さらに重要なのはNatureが最近導入したシステムで、査読者がNatureとその姉妹誌のために査読した論文数を記載した報告書が、ダウンロードできるようになったのだ。報告書は、論文投稿・追跡システムの中の“My Account”のページにログインすることで入手できる。

その報告書には、Natureとその姉妹誌すべてに関する査読活動が記載されており、雇用主や政府機関などへの正式な信用照会状となる。

研究者の査読への貢献は、これまでは口コミに頼ることが多かった。しかし、これによって、より明確な形で示されることになる。Natureは、この新しいトレンドを支援・促進していく。

翻訳:菊川要

Nature ダイジェスト Vol. 10 No. 4

DOI: 10.1038/ndigest.2013.130435

原文

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  • Nature (2012-01-03) | DOI: 10.1038/493005a