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ダイヤモンドの惑星

太陽以外の星の周りを回る系外惑星の研究は、まだ日が浅い。しかし、太陽系の惑星とはまるで異なる惑星がすでに数百は発見されている。木星を圧倒する大きさの巨大惑星、親星のすぐ近くを回る超高温の小さな岩石惑星、水苔ほどの密度しかないフワフワの変わり者などだ。

さらに、一見すると普通の惑星が、よく調べたら“あべこべ”の天体だった、ということもありそうだ。太陽系では希少な物質がその惑星ではたくさん存在し、太陽系でありふれた物質は少ししか存在しない惑星だ。

炭素を例に取ろう。有機物に不可欠なこの元素は、ダイヤモンドから石油まで、人類にとって非常に貴重な物質を構成する物質でもある。にもかかわらず、炭素はありふれた元素ではなく、地球での存在比は0.1%に満たない。

しかし別の惑星では、炭素は泥のようなどこにでもある存在かもしれない。それどころか、泥が炭素でできているかもしれない。最近、太陽系から40光年離れたある系外惑星が、まさにそんな惑星の有力候補であることがわかった。主に炭素でできていて、惑星内部では圧力によって大量の炭素がダイヤモンドになっている可能性がある。

黒鉛の地殻の下に

「かに座55番星e」というこの惑星は、厚さ数百kmのグラファイト(黒鉛)の地殻を持っていると考えられる。「その地殻の下にはダイヤモンドでできた厚い層があるだろう」と、エール大学のポスドク研究員Nikku Madhusudhanは言う。この結晶ダイヤモンド層の厚みは惑星の半径の1/3にまで及ぶとみられる。

こうした炭素惑星の独特の構成は、地球ができたのとは全く異なる形成過程によると考えられる。太陽の元素組成から考えると、太陽系の惑星のもととなった塵やガスの雲は、炭素の約2倍の量の酸素を含んでいた。実際、地球の岩石は酸素を豊富に含むケイ酸塩を主成分としている。

これに対し、かに座55番星eの親星は炭素のほうが酸素を少し上回っており、惑星が形成された環境も非常に異なっていたと思われる。Madhusudhanらがこの惑星の特性を計算したところ、密度は水よりも大きいが、鉱物でできた地球のような惑星よりは小さく、炭素惑星に予測される値と一致した。この研究結果はAstrophysical Journal Letters誌2012年11月10日号に掲載された。

翻訳:粟木瑞穂

Nature ダイジェスト Vol. 10 No. 2

DOI: 10.1038/ndigest.2013.130215b