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SN2011dhは、超巨星の爆発

宇宙の片隅でエキサイティングな現象が起き、それを人類が偶然目撃することがある。3000万光年彼方にある「子持ち銀河」に出現した超新星が、まさにそれだった。2011年5月末、この美しい渦巻銀河で爆発した星の光が地球に到達した。

天文学者たちは、この超新星SN2011dhが大質量星の崩壊によって生じたことをすぐに突き止めたが、最期を迎えたその大質量星がどんなタイプの星だったのかは謎として残った。何が起きたかを明らかにするにあたっては、この銀河が以前からよく観測されてきたという事実が役に立った。2005年にハッブル宇宙望遠鏡がこの銀河を詳細に調べており、その画像と2011年の画像を比較したところ、超新星が生じたちょうどその場所に、以前は平凡な黄色い超巨星があったのだ。

だが一部の天文学者は、超巨星が崩壊したにしては、超新星の温度が低すぎることを明らかにした。彼らのデータは、消滅したのは超巨星ではなく、もっと小さな青い星であることを示していた。それはおそらく、黄色い超巨星の非常に近くにあった星だ。「実際に爆発した青い星が黄色い星の陰に隠れていた、というのが私たちの推測でした」と、カリフォルニア工科大学の天文学者Schuyler Van Dykは言う。

しかし、ライバルの研究グループは別の結論に達した。英アイルランドにあるクイーンズ大学のJustyn Maundらは、ハッブルの画像で特定された黄色い星そのものが爆発したのだ、と推測した。だが2011年の時点ではどちらが正しいか誰も確かなことは言えなかった。超新星の明るい輝きがその領域全体を覆い隠していたからだ。

2013年3月には超新星の明るさがかなり落ち着き、Van Dykらはハッブルを使って再びこの領域を観測した。すると、黄色い超巨星は消えていた。超新星となったのは結局のところ、やはりこの星だったのだ。「Maundらのチームが正しかったのです」とVan Dykは認める。彼が主執筆者となった論文はAstrophysical Journal Letters誌に掲載された。

だが、この超新星の物語はこれでおしまいというわけではない。SN2011dhはⅡb型というまれなタイプの超新星であることが判明した。このタイプの超新星は、水素からなる外側の殻の大半をはぎ取られた巨星が崩壊して生じる。水素の殻をはぎ取るのは伴星の引力だろうと考えられており、もしそうなら、この超巨星の伴星がまだ存在しているはずだ。そして、超新星残骸の輝きが減衰するにつれ、ハッブル望遠鏡でもうすぐその伴星が見られるはずなのだ。

翻訳:粟木瑞穂

Nature ダイジェスト Vol. 10 No. 12

DOI: 10.1038/ndigest.2013.131210a