Research Highlights
高度な脳だけで道具は使用できない
道具を巧みに使用することは知能の表れと考えられているが、相応の身体的特性も必要であることが、器用なカラスの研究で明らかにされた。
Credit: Jolyon Troscianko (University of Cambridge) and Christian Rutz (University of St Andrews)
ニューカレドニアガラス(Corvus moneduloides;写真)は、棒状のものから道具を作り、それを使って狭いすき間の奥から獲物を引っ張り出す。Jolyon Troscianko(英国バーミンガム大学)、Christian Rutz(現在は同セントアンドリュース大学)らの研究チームは、このカラスの視野とくちばしの形を調べた。道具を使わない近縁種と比較したところ、このカラスは両眼の視野の重なりが大きかった。獲物を入れた管の底にビデオカメラを仕込んだ研究チームは、道具を使用しているカラスが両眼を前に向け、視覚を制御しやすくしていることを発見した。また、くちばしは近縁種と比べてまっすぐなため、両眼の視野に収まった道具が操作しやすくなっている。
ヒトの柔軟な手首や対向する親指と同じく、そうした特徴は、道具を使うための身体的適応の数少ない例となっている。
翻訳:小林盛方
Nature ダイジェスト Vol. 10 No. 1
DOI: 10.1038/ndigest.2013.130114
参考文献
- Nature Commun. http://dx.doi.org/10.1038/ncomms2111 (2012)