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2018年11月号

Japanese Author: 光で活性化されるタンパク質の新型を発見

ロドプシンは、光を受容して反応するタンパク質である。ヒトの眼の網膜で働いたり、オプトジェネティクス(光遺伝学)技術に利用されたりすることで知られている。ロドプシンには、タイプ1(微生物型)とタイプ2(動物型)の2種類が存在するというのがこれまでの通説だったが、今回、それを覆す発見があった。第3のタイプのロドプシン、「ヘリオロドプシン」が、神取秀樹・名古屋工業大学大学院教授と井上圭一・東京大学准教授らにより報告されたのである。

2018年10月号

Japanese Author: 最遠方銀河からのメッセージ

宇宙からはさまざまな電磁波がやってくる。生まれたての星から、寿命を終えた星の残骸から、そして宇宙創生期の天体から。天文学者たちは、こうした電磁波のメッセージを解読し、宇宙の成り立ちを解き明かす。このほど、MACS1149-JD1という銀河が132.8億光年離れた最遠方の銀河であることを、大阪産業大学の井上昭雄准教授と橋本拓也研究員を中心とする研究チームが同定し、Nature 5月17日号に発表した。さらに、この銀河では、ビッグバンから2.5億年後にはすでに星が形成されていたことも突き止めた。

2018年9月号

Japanese Author: 根から葉へと乾燥を知らせる物質の正体

植物は、自然界のさまざまな環境の変化にさらされながら生長していかなければならない。そのためには、環境の変化を常にモニターし、その情報を植物体の各器官に的確に伝える仕組みが必要だ。理化学研究所環境資源科学研究センターの高橋史憲研究員と篠崎一雄センター長らは、根の細胞が乾燥を察知するとペプチドを合成して分泌し、それが維管束を移動して葉に伝わると、植物体は乾燥に備えて準備するようになることを明らかにし、Nature で報告した。

2018年8月号

Japanese Author: シナプス強度を制御する分子機序を解明

脳機能を支える神経回路は、神経細胞同士がシナプスというつなぎ目を介して複雑につながることで作られる。脳の情報や指令は、神経細胞内においては電気的に伝達されるが、シナプスでは神経伝達物質を内包した小胞を介して化学的に伝達される。しかし、伝達の強度を左右する小胞放出の場の数や、場の形成過程などは不明であった。このほど、廣瀬謙造・東京大学大学院医学系研究科教授らは、独自に開発した高感度のイメージング技術に分子の超解像可視化技術を組み合わせることで、場の形成に関わる分子実体の解明に成功した。

2018年7月号

Japanese Author: スピンを活用し、ひずみ方向検知に初成功 ― 柔らかいセンサー開発に道

磁性体(磁石)が変形すると磁化方向が変わる性質を利用して、変形の方向を検出できる柔らかいひずみセンサーの動作実証に、東京大学大学院工学系研究科准教授の千葉大地さん、同研究科博士課程2年の太田進也さん、株式会社村田製作所シニアプリンシパルリサーチャーの安藤陽さんの3人が世界で初めて成功し、新創刊のNature Electronics 2月号に発表した。電子の磁気的性質であるスピンを活用する「スピントロニクス」と、折り曲げることができる電子部品を創造する「フレキシブルエレクトロニクス」を融合した新しいデバイス開発に道を開くものだ。3人に研究の背景、今後の方向性などについて聞いた。

2018年6月号

Japanese Author: 窒素固定 ― 常識破りのメカニズムに迫る

空気中の窒素から、肥料として不可欠なアンモニアを作る「ハーバー=ボッシュ法」は、人類の食料供給を100年以上にわたり支えてきた。ただし、この方法は高温高圧が不可欠であるため、多くのエネルギーと大型プラントが必要となる。このため、消費エネルギーが低く小型の設備かつオンサイトで可能な窒素固定法の開発は、現在最も社会的要請の高い研究の1つだ。このほど、ランタン・コバルト・ケイ素の3元素から成る金属間化合物(LaCoSi)が、400℃、常圧という従来よりはるかに温和な条件下で窒素固定触媒として働くことが、Nature Catalysis に報告された。その開発の過程について、細野秀雄・東京工業大学教授および多田朋史・同大学准教授に話を聞いた。

2018年5月号

Japanese Author: シングルセル解析の新たな計測技術を開発

生命科学の研究方法として、「シングルセル(単一細胞)解析」が大きな注目を浴びている。臓器に含まれる細胞を個別に解析していく研究方法であり、細胞集団を解析して平均値を捉えるこれまでの手法では見逃されてきた新しい細胞種、また、これまでにないレベルでの細胞機能を解明できるようになった。この分野で新技術の研究・開発を進める二階堂愛・理化学研究所ユニットリーダーと、今回の完全長RNAの解析技術「RamDA-seq」の開発を担った林 哲太郎研究員たちに話を伺った。

2018年4月号

Japanese Author: 脳のアルツハイマー病変を血液で検出可能に!

日本には450万人を超える認知症患者がいて、その7割弱がアルツハイマー病だとされる。他国も同様で、製薬会社はこぞってアルツハイマー病の治療薬やワクチンを開発しているが、失敗が相次いでいる。敗因の1つに「投与するタイミングが遅すぎる」可能性が示唆されている。このほど、国立長寿医療研究センターと島津製作所が中心となり、アルツハイマー病の病変(脳内アミロイドβ蓄積)の有無をごく初期から検出できる血液バイオマーカーを開発した。

2018年3月号

Japanese Author: ピラミッドの巨大新空間を科学的に発見

世界最大であるクフ王のピラミッド。森島邦博 特任助教が率いる名古屋大学の研究チームは、宇宙線のミューオンを利用して、まるでレントゲン写真を撮るように、ピラミッドを傷つけることなく、その内部構造を可視化することに成功した。するとそこには、謎の巨大空間が出現し、考古学者たちを驚かせている。

2018年2月号

Japanese Author: 後肢発生研究で見えてきた、胴の長さの進化

地球上には、さまざまな胴の長さの脊椎動物がいる。最も短いものの代表例はカエルで、背骨の数は8つほど。最長はニシキヘビ(ヘビ亜目)などで、背骨は200以上あるという。名古屋大学大学院理学研究科の鈴木孝幸講師、黒岩厚教授らは、長年、後ろ足がいつ、どこに、どのような遺伝子の働きで作られるかを調べてきた。このほど、後ろ足を含む体の後方部分の構造を作る場所が、ただ1つの遺伝子で決定されることを突き止め、この遺伝子の発現タイミングが、後ろ足の位置、つまり胴の長さの多様性を生み出していることを見いだした。

2017年12月号

Japanese Author: FANTOM5データを誰でも活用できる形に

理化学研究所主宰の哺乳類ゲノムの国際研究コンソーシアム、FANTOM。現在の第5期FANTOM5では、500種類以上の細胞(臓器由来含む)ついて、ゲノムから転写されたRNAが網羅的に測定・解析された。FANTOM5データの多くはすでに公開済みだが、データ取得プロセスや試料の品質、データ処理などを詳しく記述した報告は、今回のScientific Data が初めてだ。同時に、FANTOM5などの遺伝子発現データを簡単に検索・閲覧できるウェブツール「RefEx」に関する論文も同誌に報告。公開データの活用を促すこれらの研究に尽力した4人のデータサイエンティストに話を伺った。

2017年11月号

Japanese Author: ゲノム刷込みを維持し高効率にES細胞作製

多くの研究室でES細胞を容易に樹立できるようになったのは、培養成分の改良によるところが大きい。2008年には血清の代わりにMEK1/2阻害剤とGsk3β阻害剤を添加する画期的な手法が登場し、均一で質の良いES細胞を高効率で樹立できるようになった。ところが、この手法で樹立したES細胞では、親から受け継いだはずのゲノムインプリンティングが消去されていて、厳密なレベルでの個体発生能を持たないことを、山田泰広・京都大学iPS細胞研究所(CiRA)教授らは突き止めた。そのうえで、ゲノムインプリンティングを維持したES細胞を高効率に樹立する方法も見いだした。

2017年10月号

Japanese Author: 制御性T細胞研究とともに歩む

異物を攻撃して体を守る働きをする免疫反応には、それを促進する役割と抑制する役割を果たす仕組みが備わっている。抑制する働きの1つを担う制御性T細胞の存在を提唱し、それを証明した坂口志文・大阪大学特任教授には、ガードナー国際賞をはじめとするたくさんの賞が与えられた。現在、制御性T細胞のコントロールを目指して、ゲノムやエピゲノムレベルでの研究を進めている。

2017年9月号

Japanese Author: 加熱しても冷却してもできる超分子ポリマー

プラスチックなどポリマーは温度が上昇するとバラバラになるという常識を覆し、加熱すると結合(重合)する「超分子ポリマー」の開発に、理化学研究所の宮島大吾上級研究員、相田卓三グループディレクターらの研究チームが成功した。分散した状態で冷却しても同様の重合が見られ、新たな材料開発に道を開くものとして注目される。6月26日付Nature Chemistry電子版に掲載された1。開発の背景、今後の研究の方向性などについて、研究を中心となって進めた宮島上級研究員に聞いた。

2017年8月号

Japanese Author: 食虫植物の進化がゲノム解読から明らかに

植物なのに虫を捕らえて食べる「食虫植物」。この不思議な生き物は、一体どのように進化してきたのだろう。このほど、長谷部光泰・自然科学研究機構基礎生物学研究所教授と、当時大学院生として長谷部研に所属していた福島健児さん(現 コロラド大学研究員)らは、食虫植物フクロユキノシタのゲノム配列を明らかにし、さらに捕らえた虫を分解する消化酵素の進化について解明して、Nature Ecology & Evolution 3月号に発表した。食虫植物の進化の謎解きに挑むお二人に聞いた。

2017年7月号

Japanese Author: 人工硝子体として長期埋め込み可能なゲル

大量の水を含み弾力性に富んだハイドロゲルは生体軟組織と似ており、医療材料として注目されている。一方で、膨潤、白濁、炎症などを引き起こすといった問題も抱えており、広く実用化されているものはあまりない。このほど、酒井崇匡(さかい・たかまさ)・東京大学大学院准教授らは、膨潤や白濁の問題をクリアし、液体からゲル化までの時間も制御できる、注入可能なハイドロゲルを開発。実際にこのハイドロゲルをウサギに導入し、長期の埋め込みが可能な人工硝子体としての安全性を確認した。

2017年6月号

Japanese Author: マクロファージの概念を変える発見

免疫反応におけるゴミ処理係として知られるマクロファージが、近年、大いに注目を集めている。マクロファージは1種類の細胞ではなく、さまざまな機能を持って分化し、いろいろな疾患に特異的に働く多様なマクロファージが複数種存在するというのだ。一連の研究を牽引するのは、大阪大学審良静男研究室の佐藤荘助教である。

2017年5月号

Japanese Author: 月に届く地球の風

地球に一番近く、空を見上げればそこにある月。このなじみ深い天体を日本の探査機「かぐや」が調査したことは、よく知られている。このほど、地球の高層大気圏から流失したO+イオンが月にまで届いていることが、大阪大学・名古屋大学・JAXA(宇宙航空研究開発機構)の共同研究により突き止められ、 2017年創刊のNature Astronomy 2月号に発表された。検出されたO+は高いエネルギーを持ち、月表面の数十nmまで貫入することができる。このことは、太古から現在に至るまで、月が常に地球由来の物質にさらされてきたことを明らかにした初めての成果である。研究の中心となった、大阪大学大学院理学研究科の寺田健太郎さんとJAXA宇宙科学研究所の横田勝一郎さんにお話を伺った。

2017年4月号

Japanese Author: 恐怖記憶を消去するニューロフィードバック技術を開発

人間の脳が恐怖体験を記憶しやすいのは、危ないものに二度と近づかないために意味があるからだといわれる。しかし、それがトラウマ(心的外傷)となって日常生活に支障をきたすこともあり厄介だ。このほど、最新の情報学的技術を脳科学に応用して恐怖記憶を消去する新技術が、新創刊のNature Human Behaviourに報告された。従来の恐怖記憶の緩和治療に伴いがちなストレスを大きく低減できる画期的な方法と期待される。論文著者である情報通信研究機構(NICT) 脳情報通信融合研究センター(CiNet)および株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR) 脳情報通信総合研究所に所属するお三方に話を伺った。

2017年3月号

Japanese Author: 360度曲がる携帯型テラヘルツ波スキャナー

雲の分布や海水温のモニタリング、セキュリティー検査、がんの画像診断などのさまざまな用途で、「見えないものを見る」非接触・非破壊のイメージング技術が使われている。その際に使われる電磁波の波長はさまざまだが、30〜3000µmのテラヘルツ波は、得られる画像の解像度が低い、装置が大がかり、といった理由で実用化が遅れていた。今回、河野行雄・東京工業大学科学技術創成研究院准教授らは、カーボンナノチューブでできたフィルムを利用することで、360度曲げることができ、携帯も可能な小型のテラヘルツスキャナーの開発に成功した。

2017年2月号

Japanese Author: 自閉スペクトラム症研究から「個性」の探求へ

脳や神経系がどのように発生・発達するか、その仕組みを研究してきた大隅典子・東北大学大学院医学系研究科教授。近年は、自閉スペクトラム症の研究にも取り組んできた。2016年7月、「個性」を創り育む脳の仕組みに挑むため、脳科学に加え、人文・社会系、理工系分野の力を集結した大規模プロジェクトを立ち上げた。科学で「個性」に正面から取り組む初めてのプロジェクトである。

2017年1月号

Japanese Author: iPS細胞を用いた新アプローチで心機能改善

iPS細胞の臨床応用に向けた研究が加速している。例えば、心筋細胞に分化誘導した上で直径数cm、厚さ0.1mmほどのシートを作製し、重篤な心不全患者の心臓に貼り付ける治療は2016年度中にも臨床試験が始まるとされる。そうした中、信州大学バイオメディカル研究所の柴祐司准教授らは、サルのiPS細胞を心筋細胞に分化させ、単一細胞のまま別個体のサルの心臓に移植する実験を世界で初めて行い、心機能改善の効果が得られることを実証した。

2016年12月号

Japanese Author: AI活用でゲノム医療・精密医療の実現へ

2016年10月、ラスベガスで開かれたIBM社の国際イベントに招かれ、人工知能「ワトソン」の医療応用について語った宮野悟 教授(東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター)。人工知能を活用してゲノムのビッグデータを医療に効果的に役立たせることが今後の世界の潮流となり、そのための経済的基盤と社会的コンセンサスの構築が求められてくると宮野教授は指摘する。

2016年11月号

Japanese Author: 標的遺伝子だけオンに! エピゲノム編集登場

2012年に登場するやいなや、世界中で使われるようになったゲノム編集技術CRISPR-Cas9。狙ったDNA配列を簡単に操作できることから、DNAの修飾状態を改変する「エピゲノム編集」への応用も期待されている。今回、群馬大学 生体調節研究所の畑田出穂教授と森田純代研究員は、狙った遺伝子のスイッチだけをオンにするDNA脱メチル化技術を完成させた。

2016年10月号

Japanese Author: 握り飯より柿の種、早石修先生の志を継いで

京都大学名誉教授の早石修(はやいし・おさむ)博士が、2015年12月17日、逝去された。享年95歳。米国で研究生活を送った1950年代、酸素添加酵素を発見し、生化学の定説を覆す新たな概念を打ち立てた。帰国後、京都大学や大阪バイオサイエンス研究所でさらに研究を進めるとともに、多くの弟子たちに科学の真髄をとことん教授した。今回お集まりいただいたのも、師を偲ぶ4人の弟子である。

2016年9月号

Japanese Author: 地球の内核と磁場形成に新たな議論!

地球の中心部は、「固体の鉄合金からなる内核」を「液体の鉄合金からなる外核」が覆った構造をしており、その物性が磁場形成やプレート運動などのカギを握っている。東京工業大学理学院地球惑星科学系の太田健二講師は、外核に相当する157万気圧、4500Kもの超高圧高温環境を作り出し、鉄の電気伝導度を測定することに成功した。実測というインパクトとともに、「約7億年前」と導き出された内核形成の時期が、新たな議論を呼んでいる。

2016年8月号

Japanese Author: 免疫から逃れるがん特有のゲノム異常発見

がんゲノムの研究における第一人者、小川誠司教授は、血液がんをはじめ、さまざまながんの仕組みを解き明かしてきた。今回、片岡圭亮特定助教とともに行ったがん症例の大規模解析により、がんが免疫から逃れる仕組みの1つを解明した。この知見を利用すれば、免疫チェックポイント阻害剤の効果が予測できるのではないかと考えられ、注目を集めている。

2016年7月号

Japanese Author: 次世代電池を牽引する、全固体電池開発

広く普及しているリチウムイオン電池の3倍以上の出力特性を持つ、全固体(型)セラミックス電池が開発された。開発に成功したのは、東京工業大学物質理工学院の菅野了次教授、トヨタ自動車の加藤祐樹博士らの研究グループで、リチウムイオンの伝導率がこれまでの2倍という過去最高の性能を誇る固体電解質の発見によって実現した。次世代の自動車開発、スマートグリッド拡大などにつながる有力な蓄電デバイスとして期待される。成果は今年1月に創刊したNature Energy の4月号に発表された。菅野教授、筆頭著者の加藤博士に研究の意義、今後の展望などについて伺った。

2016年6月号

Japanese Author: 水から高効率で酸素と電子を生む鉄触媒

地球温暖化やエネルギー問題を背景に、太陽の光エネルギーを化学エネルギーへと変換する人工光合成技術の開発が注目を集めている。その1つに「水を酸化して酸素、プロトン、電子を得る反応」がある。このような中、分子科学研究所、正岡重行グループは高い効率で酸素を発生させる鉄触媒を作り、Nature に報告した。筆頭著者である総合研究大学院大学博士課程3年の岡村将也さん(2016年4月より名古屋大学大学院特任助教)に掲載までの経緯を伺った。

2016年5月号

Japanese Author: カメムシの腸内共生細菌は進化の途上

昆虫の体内に棲みつき、昆虫にとって欠くことのできない役割を果たしている共生細菌。自然界で別々に暮らしていた昆虫と細菌が、長い進化の過程を経て、互いに不可欠な存在になったのだ。しかし、そのような関係に至った仕組みはまだ分かっていない。この謎に迫る重要な発見がNature Microbiology の創刊号で報告された。自然界で現在進行中の共生進化の過程を捉えることに、日本の研究チームが成功したのだ。

2016年4月号

Japanese Author: ボトムアップ法が拓くナノカーボン科学の新局面

1985年のフラーレン発見以来、ナノチューブやグラフェンなどのいわゆるナノカーボン類は社会に多大なインパクトをもたらしてきた。ナノカーボン類は現在、レーザー照射などでグラファイトを蒸発・凝結させるといった「トップダウン型」の手法で合成されることがほとんどだが、近年、ナノカーボン構造を有機合成の手法で構築する「ボトムアップ型合成」の研究が盛んになっており、この手法に関する総説がNature Reviews Materials 創刊号に掲載された。著者である名古屋大学の伊丹健一郎教授、瀬川泰知特任准教授、伊藤英人講師のお三方に、有機合成で作ることの意義と現状、今後の展望について伺った。

2016年3月号

Japanese Author: 植物の体内時計、組織ごとに異なる役割!

地球の生物は、地球の自転に応じた24時間周期の昼夜変化に同調して生きている。例えばヒトでは、体温、睡眠、ホルモン分泌などが24時間のリズムを刻んでいる。このような概日リズムは、脳の 視交叉上核にある体内時計が機能することで刻まれ、光や温度変化のない条件でも認められる。一方、ヒトのような中枢神経系を持たない植物にも、日長や季節に応じた花芽の形成、細胞の伸長などが見られる。京都大学生命科学研究科の遠藤求准教授らは、シロイヌナズナの体内時計を組織ごとに破壊し、維管束では日長、葉肉では温度というように情報を別々に処理していることを突き止めた。

2016年1月号

Japanese Author: 老化を制御し、予防する

年齢とともに、体の生理機能が低下する「老化」。私たちはなぜ老化するのか。老化は、どのような仕組みで制御されているのか。その謎を追い続けてきた今井眞一郎教授は、制御の中核となる「サーチュイン遺伝子」の機能を発見し、さらに、脳をコントロールセンターとする組織間ネットワークの働きを研究してきた。「老化の仕組みを科学的に解明することは、病気を効率的に予防する方法を見いだせる最善の道」と今井教授は語る。

2015年12月号

Japanese Author: わずか6種のタンパク質で染色体凝縮を再現

1つのヒト細胞に含まれるゲノムDNAは、全長約2mに達する。分裂の過程で複製したDNAを正確に分配するには、規則正しく折りたたんで染色体へと「凝縮」させる必要がある。理化学研究所の平野達也主任研究員は、この過程のカギとなるタンパク質複合体「コンデンシン」を1997年に発見。さらに2015年、わずか6種の精製タンパク質から試験管内で染色体を作る実験系の開発にも成功した。

2015年11月号

Japanese Author: 「プログラム合成」で、究極の構造多様性を征服する

ベンゼン環は、有機化学の象徴ともいうべき構造であり、天然・人工を問わず多くの化合物の基本単位だ。このベンゼン環に各種の置換基を導入することで、多様な性質を引き出すことができ、例えば液晶材料・有機EL・医薬品などの高付加価値化合物がここから生み出される。このため、ベンゼン環上の望みの位置に必要な置換基を導入する手法の開発は、化学の黎明期から変わらぬ重要なテーマだ。このほど名古屋大学の伊丹健一郎教授、山口潤一郎准教授らのグループは、ベンゼン環の6つの炭素に、全て異なる芳香環が導入された「ヘキサアリールベンゼン」の合成に成功した。その意義、研究の経緯などを、両博士に伺った。

2015年10月号

Japanese Author: 小胞体も核も選択的オートファジーの対象だった!

次々と出る良好な実験データ─「うまくいきすぎて、怖いくらいでした」と、持田 啓佑・大学院生は研究を振り返る。オートファジーは、細胞内の大規模分解システム。世界中で激しい研究競争が繰り広げられているこの分野で、細胞の小胞体に加え、核のオートファジーの仕組みをも明らかにすることに、わずか2年ほどで成功したのだ。

2015年9月号

Japanese Author: 葉の気孔から発生の謎を解く

2015年、自然科学の分野で実績を残してきた女性科学者に与えられる猿橋賞を受賞した鳥居啓子名古屋大学客員教授。米国ワシントン大学教授であり、米国で最も革新的な15人の植物学者の1人として、ハワード・ヒューズ医学研究所(HHMI)正研究員にも選ばれる。植物の気孔が形成される仕組みを解明し、シグナル伝達による植物の発生の制御へと、研究フィールドを広げ続けている。

2015年8月号

Japanese Author: 攻めか、守りか、棋士の直観を脳科学で解明

プロの世界では、一瞬の気の迷いが命取りになることが少なくない。求められるのは、どのような状況下でも、瞬時に正しい決断を行う人並み外れた能力だ。理化学研究所 脳科学総合研究センター 認知機能表現研究チームの田中啓治チームリーダーらは、訓練を重ねたプロ棋士が直観的に「次の手」を決めたり、「攻めるか守るかの戦略」を決めるときの神経基盤の解明を進めてきた。10年にわたる脳活動の測定により、これまでに知られていなかった回路を突き止めることに成功した。

2015年7月号

Japanese Author: 細胞が重力でつぶれない仕組みを発見

体が扁平になる奇妙なメダカの変異体が発見された。どうして扁平になるのか — 10年余りにわたる探索の結果、ようやくその謎が解かれた。普通のメダカの細胞には、重力に押しつぶされないような仕組みが働いていたのだ。その仕組みが存在しなかったら、ヒトはもちろん地球上の生物の大部分は、今の形をしていなかったかもしれない。

2015年6月号

Japanese Author: エンセラダスに生命の萌芽を見出す

ガリレオやカッシーニ、火星ローバーなどによる惑星探査が進み、地球と似た環境がかつて存在した火星、液体の現存する木星の衛星エウロパ、土星のタイタンなどで、生命存在の可能性が議論されてきた。一方で、見向きもされなかった土星の小さな衛星エンセラダスが、にわかに注目を集めている。原始的な微生物であれば、生息可能であることが分かってきたからだ。東京大学大学院理学系研究科の関根康人准教授は、国際的な研究チームの一員として実験室での再現実験を担当し、微生物を育める環境の存在を実証することに成功した。

2015年5月号

Japanese Author: 生物非対称性の研究もセンター運営も、皆で手を携えて

「心臓はなぜ体の左側にあるのか」といった左右非対称性の研究で、その分野を開拓しリードしてきた発生生物学者・濱田博司氏。2015年4月、理化学研究所 多細胞システム形成研究センターの新センター長に就任した。左右非対称性の仕組み解明を目指す研究者としての取り組みと、新センター長としての抱負について伺った。

2015年4月号

Japanese Author: リン酸化反応を多角的に解析し、シグナル伝達系の全貌に迫る!

人体には200種以上の細胞が存在するとされ、細胞独自の形態や運動性、極性などは、細胞内外のさまざまな情報の授受と伝達により獲得・決定されている。この過程はシグナル伝達と呼ばれ、生命活動の基盤をなす一方、異常を生じると、がんや循環器疾患、神経・精神疾患の原因となる。名古屋大学大学院医学研究科・神経情報薬理学講座の貝淵弘三教授は、35年にわたり、リン酸化反応を介したシグナル伝達系の解析を進めている。

2015年3月号

Japanese Author: 脳の中に記憶の正体を探す

「脳の研究にとって、こんなにワクワクする時代はないと思います」。脳の高次機能の研究に長年取り組み、特に記憶のメカニズムの解明で世界を牽引してきた東京大学大学院医学系研究科の宮下保司教授は目を輝かせる。脳科学者にとって、テクノロジーのブレークスルーが起きているからだという。30年間の研究を振り返りつつ、宮下教授は興味の尽きない研究の将来を語る。

2015年2月号

Japanese Author: 網膜内部に血管が入り込まない仕組みを、分子レベルで解明!

生体には血管網が張り巡らされており、血管を介してさまざまな物質が供給される。血管新生はがんなどで異常に活性化されるため、新生メカニズムの研究は世界中で盛んに行われている。一方で、血管が入り込まない組織(軟骨や発生期の網膜など)があることも知られているが、その排除メカニズム解明は全く進んでいなかった。このほど、久保田義顕・慶應義塾大学医学部准教授らは、血管網の可視化研究から、思いがけない仕組みによって血管が排除されていることを突き止めた。

2015年1月号

Japanese Author: 誰もが“バイオインフォマティシャン”の時代

インターネット上の情報やツールを使った遺伝子検索や配列解析など、生命科学分野では研究者や医療従事者によるビッグデータの活用が重要になってきた。そのときに役立つのが、バイオインフォマティクス(生物情報学)の基礎知識。だが日本では教育が遅れ気味だ。バイオインフォマティクス分野の草分け的存在の4人に、バイオインフォマティシャンの仕事や役割、この分野の展望を語ってもらった。

2014年12月号

Japanese Author: 脳の大きさを制御する、新たな分子メカニズムを解明!

ヒトの脳は約1.3〜1.5kgとされるが、容量がこれよりも病的に小さく、知的障害を伴う「小頭症」という疾患がある。神経変性疾患を研究対象にしてきた岡澤均・東京医科歯科大学教授らは、ニューロンの核における機能分子の探索と解析を続ける中でPQBP1という新規タンパク質を突き止め、その異常によりあるタイプの小頭症が引き起こされることを分子レベルで解明した。

2014年11月号

Japanese Author: 定量的なプロテオミクス技術の開発─挑戦的な研究テーマが10数年越しに結実

「そんなやり方は、クレイジーだ」と言われたこともある。それでも、ひるまなかった。技術革新が科学を進めると信じる強い気持ちと、積み上げた実験結果で、タンパク質の包括的定量技術の開発に成功した。その10数年越しの研究を、中山敬一教授(九州大学生体防御医学研究所)が初めて語る。

2014年10月号

Japanese Author: 遺伝情報の転写時に、短いRNAが作られる仕組みを解明!

遺伝子の情報はいったんmRNAに写し取られるが、mRNAは「ただ写し取られた」ものではない。mRNAは作られる過程で不要な部分が切り取られたり、末端に特定の配列が付加されたりするなどの加工を受ける。山口雄輝教授は、山本淳一研究員とともに、作られるRNAの長さを適切に制御する仕組みを発見した。この発見はRNAの長さはDNAに刻み込まれているとされていた従来の概念を覆すものだ。

2014年8月号

Japanese Author: 極低温電子顕微鏡が可能にする、膜タンパク質の構造解析

酵素や転写因子などのタンパク質は、三次元結晶を用いたX線構造解析やNMRなどによる解明が進んでいる。一方、膜に埋まったタンパク質は、本来の構造を維持したままの結晶化が困難なことから解析が遅れている。そうした中、名古屋大学の藤吉好則特任教授は、自らの手で極低温電子顕微鏡と呼ばれる特殊な電子顕微鏡を開発し、膜タンパク質研究を牽引し続けている。

2014年7月号

Japanese Author: 次世代シーケンサーで、研究も医療も変わる!

ゲノム配列を高速で解読できる次世代シーケンサーが米国などの数社から製品化され、さまざまな基礎研究や応用分野で活発に使用されるようになってきた。この装置で具体的にどんなことが可能なのか、ゲノム解析技術の開発や整備に長年関わってきた東京大学の菅野純夫教授と、次世代シーケンサーを使った研究成果を次々と発表している京都大学の小川誠司教授に、医学や医療の分野を中心に話を聞いた。

2014年6月号

Japanese Author: がん幹細胞を正常細胞に変える方法を確立し、がん完治を目指す!

一貫して、がん幹細胞を対象に研究を続ける、慶應義塾大学医学部 先端医科学研究所 遺伝子制御研究部門の佐谷秀行教授。今回は、信末博行特任助教らとともに「細胞の形の変化が、その細胞の運命を決める」との、逆説的にも思える成果をもたらした。研究は、治療の難しいがん幹細胞を正常な脂肪細胞へと導く新たな治療法につながる可能性を秘めるという。

2014年5月号

Japanese Author: ゲノム研究から先制医療へ

その行動力で数々のプロジェクトを牽引し、ゲノム研究を推進してきた理研の林崎良英ディレクター。FANTOMコンソーシアムの設立、ノンコーディングRNAの発見、マイクロアレイやシーケンサー技術の導入など多くの成果を挙げてきた。親しみやすさと率直さがトレードマーク。「でも発言がストレートなので、誤解されやすいんですよ」と言う。今回新たに立ち上げたのは「予防医療・診断技術開発プログラム」。先制医療へ乗り出すのだという。林崎ディレクターは今、何を考える?

2014年4月号

Japanese Author: CRISPR法が世界を変える!

標的とする遺伝子のDNA配列を改変できるゲノム編集技術が開発され、注目を浴びている。この技術によって、さまざまな生物種で遺伝子ノックアウトなどが可能になるのだ。また、2014年3月14〜16日に徳島大学で国際的なゲノム編集シンポジウムが開催されるに当たり、シンポジウム直前の徳島大学の研究者たちに、この技術の持つ意味と可能性について解説していただいた。また、ラットにおけるゲノム編集技術について、京都大学の真下知士准教授にお話を伺った。

2014年3月号

Japanese Author: アポトーシスは 脳の形作りに必須だった!

多細胞生物には、細胞が自ら死に向かう「アポトーシス」が備わっている。特に発生過程では、アポトーシスが厳密に実行されることで、特定の大きさ、機能、形を持つ組織や臓器が作られる。このほど、東京大学大学院薬学系研究科の三浦正幸教授と山口良文助教らは、アポトーシスが、脳の発生を次の段階に進めるスイッチであることを初めて実証した。

2014年2月号

Japanese Author: 皮膚細胞を、iPS細胞を経ずに軟骨組織に作り変える

iPS細胞から、さまざまな細胞に分化誘導する研究が加速する一方で、体細胞を他の種類の体細胞に直接誘導する「ダイレクト・リプログラミング」も検討されている。このほど、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の妻木範行教授らは、ヒトの線維芽細胞から、直接、軟骨細胞様の細胞を作り出すことに成功した。

2014年1月号

Japanese Author: 自然リンパ球の開拓者

リンパ球といえば、抗原抗体反応、つまり「獲得免疫」で働く主役の細胞群として知られてきた。ところが近年、「自然免疫」で働くリンパ球が次々と発見され、この新種の細胞群は、「自然リンパ球」と総称されるようになった。こうした研究の火付け役の1人である小安重夫氏(理研・統合生命医科学研究センター)に、自然リンパ球とは何か、また発見の経緯について伺った。

2013年12月号

Japanese Author: シーラカンスの全ゲノムが語る脊椎動物の陸上化

何億年もの間、ほとんど変わらない姿で現存し、「生きた化石」とも称されるシーラカンス。このほど、東京工業大学、国立遺伝学研究所、東京大学などによるチームが、約27億対に及ぶ全ゲノムの解読に成功した。みえてきたのは、シーラカンスの際立った特異性と、脊椎動物の陸上化に関わる分子メカニズムの一端だ。

2013年11月号

Japanese Author: 組織や器官を作り出す“職人肌”の科学者

組織や器官を構成するものは何か?─“細胞”という答えは正しくないそうだ。生体は、細胞と“細胞の足場”により成り立っていると、竹澤俊明上級研究員は言う。細胞の足場とは、細胞周囲でそれを支える支持体のこと。この組織工学の草分け研究者は、足場の研究に魅せられて、再生医療から創薬、動物実験代替法などの応用面を支える技術をこつこつと生み出してきた。

2013年10月号

Japanese Author: 脳損傷時のニューロン保護作用と グリア細胞のカルシウム濃度

受精の際、卵に精子が1つ入ると、カルシウムイオンの波が生じて2つ目が入れないようになる。この例のように、カルシウムは、さまざまな生命現象の制御シグナルとして機能している。このほど、東京大学大学院医学系研究科の飯野正光教授らは、脳が傷害を受けた際にも、カルシウムシグナルが発生して、グリア細胞がニューロンの保護活動を開始するらしいことを見いだした。

2013年9月号

Japanese Author: オートファジー ─細胞はなぜ自分を食べるのか

「オートファジー」は、細胞が自らの一部を分解する作用(自食作用)のことだ。細胞内のゴミ処理だけでなく、資源のリサイクルなどにも役立っていることがわかってきた。この十数年、飛躍的に発展してきたこの分野を牽引したのが日本の研究者たちだ。リーダーの1人、水島昇氏が、オートファジー研究のこれまでと、これからについて語る。

2013年8月号

Japanese Author: 血管付き三次元細胞シートの作製に成功!

2012年9月、大阪大学医学部の澤芳樹教授らは、衝撃的な臨床治療の成果を発表した。その患者は重篤な拡張型心筋症で、補助人工心臓なしでは生きられない状態だったが、細胞シート移植で心筋機能が回復、無事退院したというのだ。その補助人工心臓の開発メンバーの1人でもある早稲田大学理工学術院の梅津光生教授は、今回、毛細血管付きの三次元細胞シートの作製に成功した。

2013年7月号

Japanese Author: 脳の画像から、夢と心を読む

人の心をfMRI画像から読み解くという画期的な技術を開発し、世界を驚かせてきた計算神経科学者、神谷之康氏。機械学習によるパターン認識というコンピューターの手法を神経科学に持ち込み、脳の解明に挑む。今回、眠っている人の夢の中身をfMRI画像から解読することに成功した。

2013年6月号

Japanese Author: 分子モーターの 「回転する原理」を解明!

さまざまな生命現象に関与するタンパク質の中には、ナノテク顔負けの駆動装置がある。モーターのように回転するタンパク質はその代表格で、ATP合成酵素などが知られている。千葉大学大学院理学研究科の村田武士准教授は、今回、ATP合成酵素とよく似た別のタンパク質を用いて、その詳細な構造と、一方向に回転し続ける仕組みを解明した。

2013年5月号

Japanese Author: ヌタウナギが教えてくれる 脊椎動物の進化

海に棲み、名前は「ウナギ」だがウナギではなく、ましてや厳密には魚類でもない。ヌタウナギには背骨がなく、顎もなく、鼻孔が1つしかない原始的な脊椎動物。進化形態学者、倉谷滋博士は、この動物に、ヒトにまでつながる進化と発生の謎を探っている。

2013年4月号

Japanese Author: 低酸素環境で、造血幹細胞が 維持される仕組みを解明!

再生医療などへの期待が高まる幹細胞だが、まだ謎も多く残されている。めったに増殖せず、長い間維持され続ける仕組みも、その1つだ。慶應義塾大学医学部の田久保圭誉専任講師らは、造血幹細胞の維持には低酸素環境が重要であることを発見し、その分子メカニズムを突き止めた。幹細胞の維持基盤の全容解明や人工培養に向かって、道が開かれた。

2013年3月号

Japanese Author: 少数分子の反応が生物を支配する!?

例えば、遺伝子の物質的本体であるDNAは、1個の細胞中にたった2分子ずつしか存在しない。こんな少数個の分子の挙動を論じるのに、統計学的手法は使えない。もしも生命の本質に迫りたいなら、新たな原理を探らねばならないのだ。そう信じる永井健治・大阪大学産業科学研究所教授は、従来の生化学の常識をくつがえす「少数性生物学」の概念を世界に向けて発信する。

2013年2月号

Japanese Author: 軸索にできる「小さな突起」に、シナプスの形成と成熟のカギ!

脳にある膨大な数のニューロンは、シナプスでつながれることで回路を構築し、記憶、学習、運動などの機能を果たす。しかしこれまで、シナプスができるようす自体をリアルタイムで詳細にとらえた研究はなく、その分子メカニズムにも、多くの謎が残されていた。このたび、東京大学大学院医学系研究科の岡部繁男教授らは、イメージングの手法により、シナプスの形成過程を鮮明にとらえることに成功した。

2013年1月号

Japanese Author: 細胞生物学の最後の謎、中心体に迫る

動物細胞の細胞小器官である中心体。細胞分裂時に染色体を引っ張る「手」を形作る役割は知られていたが、それ以外はあまり注目されてこなかった。だが最近、繊毛との関係がクローズアップされたり、細胞分裂や分化の「司令塔」としての働きが示唆され、脚光を浴びている。34歳の若き細胞生物学者、北川大樹氏は、中心体の分子構造を明らかにし、中心体研究に大きな突破口を開いた一人である。

2012年12月号

Japanese Author: RNA転写を網羅的に解析するCAGE法が、エンコード計画で貢献!

ヒトゲノム計画の完了後に始まった「エンコード」計画。ヒトゲノムのデータ上に、遺伝子や機能の発現に必要なあらゆる領域をマッピングしようという試みだ。2012年9月上旬、そのフェーズ2の一連の成果論文が、Natureなど各誌に公表された。今回の解析のカギとなったのは、理化学研究所オミックス基盤研究領域が開発したCAGE法という手法。CAGE法の産みの親であるピエロ・カルニンチ チームリーダーに話をうかがった。

2012年11月号

Japanese Author: 霊長類の脳で、“下等な”動物の神経回路が果たしていた役割とは?

高度に発達したヒトやサルの脳神経系にも、ネコなどの“下等”な動物が持つ神経回路が残存している。神経生理学者の伊佐正・生理学研究所教授は、そうした“古い脳”にも重要な機能があることを新しい手法を用いて実証し、神経科学に新たな局面を切り開いた。

2012年10月号

Japanese Author: 分化能を失った神経系前駆細胞が、再びニューロンを作り出した!

脳内でネットワークを構築し、高度な機能を発揮するニューロン。その大半は、胎生期の神経幹細胞(神経系前駆細胞)が増殖と分化を繰り返すことで作られる。そして、生後は、ごく限られた部位を除いてニューロンへの分化能が失われる。しかし東京大学分子細胞生物学研究所の後藤由季子教授らは、ある遺伝子をマウス大脳の神経系前駆細胞に導入することで、誕生後に再びニューロンへと分化させることに成功した。

2012年9月号

Japanese Author: 一斉に波打つ繊毛 — その協調運動のカギは根元にあった

気管、卵管の表面は、上皮細胞で覆われ、一面に繊毛が生えている。たくさんの繊毛は協調して同一の動き方をし、バケツリレー式にものを運ぶ。異物の除去や、卵子の運搬移動がそうだ。世界的な上皮細胞研究者、月田早智子・大阪大学教授は、そうした繊毛の協調運動の解明に取り組んでいる。

2012年8月号

Japanese Author: 生体分子を「見たい!」

筋肉の収縮は、アクチンとミオシンの相互作用で生じる分子レベルの力が積み重なって起こる。このミクロの動きを実際に見たい。難波啓一教授は学生の頃、そう思った。だが、アクチン繊維の太さはわずか10nm。これを見るなんて、ほとんど不可能に近かった。それから30数年、ついにアクチン繊維を「見る」ことに成功。そして、今年、日本学士院賞と恩賜賞を受賞。難波教授にお話をうかがった。

2012年7月号

Japanese Author: 転写因子ネットワークを再構築することで、別の機能を果たす細胞に転換!

切断すると2個体になるプラナリアやちぎれた足が生えるイモリなど、下等動物には、体のあちこちが再生するものがいる。哺乳類でも、線維芽細胞を特殊な薬剤で処理すると脂肪細胞様になることなどが知られるが、高等動物細胞の分化や脱分化のメカニズムには不明な点が多かった。理化学研究所オミックス基盤研究領域の鈴木治和プロジェクトディレクターは、細胞が特定の機能を発揮するために必要な転写因子とそのネットワークを体系的に抽出する技術を開発。細胞に「別の細胞の機能を果たすための転写ネットワーク」を移植することで、iPS細胞などの幹細胞を経ずに、機能を転換させることに成功した。

2012年6月号

Japanese Author: ピンボケ度で距離を知るハエトリグモの目

ハエトリグモは、クモの巣を張らない。獲物めがけてジャンプし、捕まえるのだ。その目の構造が変わっていることを知った小柳光正・大阪市立大学准教授たちは詳しく調べてみた。すると、これまでに知られていない珍しい視覚の持ち主であることが発見された1。網膜に結ぶ像のボケ具合で、ハエトリグモは獲物までの距離を測っていたのである。

2012年5月号

Japanese Author: シナプスの活動を一括して調べることで、神経回路の緻密な配線メカニズムに迫る!

言語、記憶、感情などの高次機能を発揮する脳の回路。その回路を構成する膨大な神経細胞は、混線やロスなく確実に情報をやりとりするとみられている。高精度な配線と回路編成は、いったいどのようにして行われるのか。東京大学大学院薬学研究科の池谷裕二准教授は、シナプス活動を一斉に観察できる手法を開発し、その解析により、緻密な回路編成の仕組みの一端を明らかにした。

2012年4月号

Japanese Author: セントロメアの研究からヒストンと似た新規のタンパク質が見つかった

長い染色体DNA分子の中ほどに「セントロメア」と呼ばれる場所があり、細胞分裂で重要な働きをしている。国立遺伝学研究所の深川竜郎教授は、DNA上でセントロメアがどのように機能するのか研究している。今回、ヒストンに似たタンパク質が、その機能構築の決定にかかわっていることを発見した。遺伝現象におけるヒストンコードの役割が近年注目されているが、ヒストン以外のタンパク質がかかわる新規のコードが存在しているのかもしれない。

2012年3月号

Japanese Author: 糖鎖に応答する新たなエピゲノム制御を発見

ヒトの遺伝子は2万個ほどしかないが、それらを効率よく使うシステムとしてさまざまな仕組みが知られている。最近このようなシステムの1つとして、後天的にDNAや染色体の開き具合を調節するエピゲノムが注目されるようになってきた。このエピゲノム制御のカギを握るのは、DNAやヒストンの一部に施される化学修飾だ。東京大学分子細胞生物学研究所の加藤茂明教授は、ある酵素に「小さな糖」が付加されることで、化学修飾のスイッチが制御されていることを突き止めた。

2012年2月号

Japanese Author: 自律性を備えた人工細胞を創出し、生命と物質の境界を探る

「生命とは何か」という問いに物理学で答えていこうと挑戦しているのが瀧ノ上正浩・東京工業大学講師だ。生命の本質を微小空間で再現し、その挙動を数式で表す。いま挑戦しているのは、細胞の自律性を人工的に作り出すことだ。

2012年1月号

Japanese Author: 多点の弱い相互作用を利用して、細胞のふるまいを制御する

半導体デバイス、マイクロマシン、ナノテクなど微細な世界の操作を得意とする日本。これらのノウハウを医療の場でも応用すべく、その基盤作りとして「ナノメディシン分子科学」のプロジェクトが始まった。高分子材料科学が専門の京都大学再生医科学研究所の岩田博夫所長は、これまで人工膵臓の研究開発を続けてきており、今回のプロジェクトにおいて「多点の弱い相互作用を利用した分子、細胞の制御」の研究代表を務める。いったいどんなアイデアで細胞を制御しようとしているのだろうか。

2007年2月号

 Japanese Author: 遺伝子からのニパウイルス合成に世界で初めて成功(甲斐 知恵子)

東京大学医科学研究所の甲斐知恵子教授らはリバースジェネティクスの技術を確立し、ニパウイルスの人工合成に世界で初めて成功した。ニパウイルスは、1994 年マレーシアに突如として現れた。以来、アジア各地で小さな流行を繰り返し、致死率が高い。今回のウイルス合成によって、病原性を発揮するメカニズムの解明やワクチン開発が進むと期待されている。

2007年1月号

 Japanese Author: 128億8000万光年、最も遠い銀河の世界記録を更新(家 正則)

すばる望遠鏡 を用いて、国立天文台の家正則教授率いる観測チームがこれまでで最も遠い銀河の観測に成功した。「IOK-1」と名づけられた銀河の地球からの距離は128億8000万光年で、それまでの記録を6000万光年更新。宇宙進化の解明を前進させるこの成果はNature2006年9月14日号で発表され、広く世界中に報道された。家教授に、発見の経緯やその意義、今後の展望などについて話を聞いた。

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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