Computational Biology

クラスI HLA 遺伝子のがん関連体細胞変異の網羅的解析

Nature Biotechnology 33, 11 doi: 10.1038/nbt.3344

全エキソーム塩基配列解読(WES)を用いたヒト白血球抗原(HLA)遺伝子体細胞変異の検出は、HLA座位の高度な多型性が配列リードのヒト参照ゲノムへのアラインメントを妨げているために進展していない。本論文では、クラスI HLA-AB、およびC遺伝子の生殖細胞系列対立遺伝子を正確に推定し、推定された対立遺伝子を基準に用いてその遺伝子の変異を検出する電算パイプラインを紹介する。同一患者に由来する7930組の腫瘍組織と健常組織から得たWESデータの解析から、患者266例の腫瘍で非サイレントHLA変異298点が明らかにされた。この298点の変異には、機能欠失事象が推定されるものなど、機能的変異の可能性の高いものが多い。変異の頻発から、この「ホットスポット」部位が正の選択を受けたことが示唆された。HLAに体細胞変異が頻発するがんは、エフェクターリンパ球による腫瘍浸潤に特徴的な細胞溶解活性という特徴の強化と関連しており、HLA機能の変化による免疫回避ががんに寄与する機序として支持された。

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