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ナノ細孔配列解読法が一歩前進

Nature Biotechnology 30, 4 doi: 10.1038/nbt.2192-1

ナノ細孔による一分子 DNA の塩基配列解読が、Akeson ら お よ び Gundlach ら の 2 本 の 論 文 で実用化に一歩近づいた。この方法では、印加電圧 を用いて DNA がナノ細孔を通過するようにしているが、これまでは、DNA の移動速度が数桁高すぎて、背景ノイズからヌクレオチド特異的な信号を分離することができなかった。Akeson らは、Φ 29 DNA ポリメラーゼを用いて DNA の移動速度を下げる方法でこの問題に対処した。また、この方法は、特殊なオリゴヌクレオチドを用いて溶液中の DNA を保護することにより、単一のナノ細孔、ポリメラーゼ、および DNA 分子が正しく配置されるようになっている。こうした考え方は以前別々に提案されていたが、組み合わせることで、ナノ細孔による DNA 塩基配列解読が抱えていた数々の実用上の課題を解決する自動化システムの開発が促進される。さらに、この方法はさまざまなタンパク質または固体のナノ細孔にも利用可能と考えられる。不均質な DNA の鎖がナノ細孔を通過するときに個々のヌクレオチドに対応するイオン電流のレベルを測定することは、ナノ細孔配列解読法の分野の年来の目標であったが、Gundlach らは、過去に作製された高感度な MspA ナノ細孔にその新しい速度制御法を適用してこの目標を達成した。ある実験例では、塩基配列が知られている DNA 鎖の 28個のヌクレオチドに対して 26 の電流レベルが測定され、電流レベルが測定されなかった 2 つのヌクレオチドはホモポリマー領域に位置していることがわかった。塩基配列が未知の DNA 鎖の配列解読には、塩基判定アルゴリズムの開発を進展させる必要があるが、今回の 2 本の論文では、適切な前進型 DNA 酵素およびナノ細孔を発見したり作製したりすることが、確実で忠実度の高い DNA 塩基配列解読の実現に重要となることが示唆されている。

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