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ヒトトランスクリプトームの複雑性を
とらえる

Nature Biotechnology 30, 1 doi: 10.1038/nbt.2104-1

RNA-Seqでは、試料中に多く含まれる転写物が優先的に読まれることが知られている。それは、そうした転写物の方が、プライミングされて解読される可能性が高いためである。
Mattickらは、希少な転写物の配列解読カバー率を高めるため、タイリングアレイを用いてトランスクリプトームの一部を捕捉してから配列解読を行った。これは、エキソームのDNA塩基配列解読に似た方法であり、ヒト足の線維芽細胞の約50座位の0.77 Mbで作られる転写物が十分にカバーされた。その成果は目覚ましく、RNA-Seqのリードから完全長の転写物を組み立て、HOTAIRのような非コードRNAの新たなスプライス・アイソフォーム、およびp53HOXなど研究の進んだタンパク質コード遺伝子の新たなアイソフォームが発見された。こうしたアイソフォームの存在量は定量的に評価され、別の配列解読法による長いリードおよび逆転写PCR法によって検証された。
この研究は、ヒトトランスクリプトームが当初の想定以上に大きく複雑なものであるのみならず、個別細胞間の多様性も大きいことを示唆している。トランスクリプトームを十分な網羅性と深度で解明することが配列解読技術の能力を超えると考えられる現在、RNAの選択的配列解読法は、目的とする遺伝子および転写物に的を絞った配列解読を可能にする(Genome Med.3, 74, 2011に解説記事)。

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