免疫学:TGFβはEBVと小児多系統炎症性症候群を結び付ける
Nature 640, 8059 doi: 10.1038/s41586-025-08697-6
小児や青年の一部において重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染は、感染後4〜8週に小児多系統炎症性症候群(MIS-C)と呼ばれる重篤で急性の過剰炎症性ショックを誘導する。MIS-Cは、特異的なT細胞増殖と全身性の過剰炎症によって特徴付けられるが、MIS-Cの発症機序についてはほとんど明らかにされてない。今回我々は、急性MIS-Cはウイルス反応性記憶T細胞の再活性化障害を特徴とし、これは重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)時に起こるのと同様のTGFβサイトカインの血清レベル上昇に依存する。このT細胞反応性の機能障害では、T細胞、B細胞、単球におけるTGFβ応答シグネチャーの存在と、単球での抗原提示能の低下が見られ、TGFβの阻害により回復可能である。さらに、MIS-C患者のT細胞受容体レパートリーは、エプスタイン・バーウイルス(EBV)に感染したB細胞を排除する能力のあるEBV反応性T細胞クローンと類似した、TCRVβ21.3を発現するT細胞の増殖を示した。加えて、MIS-C患者の血清TGFβはEBVの再活性化を引き起こすことがあるが、これはTGFβ阻害により抑制できる。臨床的には、TGFβによって誘導されるT細胞反応性の障害は、年齢を合わせた対照群と比較してMIS-C患者でEBVの血清有病率が高いことと相関し、EBV再活性化の発生を伴っていた。我々の結果は、小児におけるSARS-CoV-2感染とCOVID-19後遺症との関係を明らかにし、TGFβ過剰産生によって引き起こされるT細胞の細胞傷害性の低下が、EBV再活性化とその後の過剰炎症を誘導することを示している。

