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疫学:オミクロン前後でのSARS-CoV-2再感染に対する防御の違い
Nature 639, 8056 doi: 10.1038/s41586-024-08511-9
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は短い時間スケールで急速に進化し、アルファ株やデルタ株のようなより伝播性の高い変異株の出現につながった。オミクロン株の出現は大きな転換点となり、それ以前の変異株と比較してスパイク遺伝子に多数の追加変異が導入された。これらの進化的な変化は、免疫回避、疾患重症度、そしてワクチンや治療の効果に及ぼす影響の可能性について懸念を引き起こした。本疫学研究で我々は、オミクロン前とオミクロン後で、自然感染による再感染防御効果に2つの異なるパターンを見いだした。オミクロン前は、自然感染が再感染に対して強力かつ持続性のある防御をもたらし、時間経過による低下はほとんど認められなかった。これに対し、オミクロン後は、防御がロバストなのは最近感染した人のみで、防御効果は時間とともに急速に低下し、1年以内に消失した。これらの結果は、SARS-CoV-2に対する免疫防御は宿主免疫とウイルス進化の間の動的な相互作用によって形成され、これがオミクロン第1波の前後の対照的な再感染パターンにつながったことを実証している。このパターンの転換は選択圧の変化を示唆しており、オミクロン前では固有の伝播性が適応を誘導し、オミクロン後では免疫回避が優勢になっている。このことから免疫を持続するためにワクチンの定期的な更新が必要となることが明らかにされた。

