ウイルス学:SARS-CoV-2 NSP14 RNAキャップメチルトランスフェラーゼの小分子による阻害
Nature 637, 8048 doi: 10.1038/s41586-024-08320-0
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされる。SARS-CoV-2に対して非常に有効なワクチンが迅速に開発されたことでパンデミック(世界的大流行)の軌道が変わり、複数の抗ウイルス治療薬がCOVID-19による入院や死亡の数をさらに減少させた。コロナウイルスはエンベロープを有するプラス鎖一本鎖RNAウイルスであり、ウイルスRNAの複製や自然免疫からの回避に重要なタンパク質など、さまざまな構造タンパク質と非構造タンパク質をコードしている。今回我々は、ウイルスのグアニン-N7メチルトランスフェラーゼ(MTアーゼ)であるNSP14に対するファースト・イン・クラスの非共有結合性小分子阻害剤の発見と開発について報告する。ハイスループットスクリーニングによって、S-アデノシルホモシステイン(SAH)が結合したユニークな三重複合体を形成することでSARS-CoV-2 NSP14を阻害するRU-0415529が見つかった。ヒット化合物RU-0415529からリード化合物への最適化によって、解離定数(Kd)が61 pMで50%効果濃度(EC50)が11 nMのTDI-015051が得られ、これは細胞を用いた系でウイルス感染を阻害した。TDI-015051は初代培養の小気道上皮細胞やSARS-CoV-2感染のトランスジェニックマウスモデルでもウイルス複製を阻害し、FDAに承認されている可逆的共有結合性プロテアーゼ阻害剤であるニルマトレルビルに匹敵する有効性があった。抗ウイルス戦略としてのウイルスキャップメチラーゼ阻害は、他のパンデミックウイルスに対しても適用可能である。