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免疫学:XBBからJN.1へのSARS-CoV-2抗原不連続変異に対する抗体応答の進化

Nature 637, 8047 doi: 10.1038/s41586-024-08315-x

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の連続的な進化、特にXBBに取って代わるBA.2.86/JN.1系統の出現により、ワクチン組成の再評価が必要となっている。今回我々は、XBBおよびJN.1のヒトへの曝露に対する体液性免疫応答の包括的な解析結果について示す。我々は、SARS-CoV-2未感染者においてXBBおよびJN.1系統の抗原性の違いを実証し、JN.1への感染はその派生株に対して優れた血漿中和を誘導することを示す。我々は、KP.3が強力な免疫回避と受容体結合能を持つこと明らかにし、これは近いうち流行が起こる可能性を裏付けている。およそ2000の受容体結合ドメイン特異的な抗体を単離し、DMS(deep mutational scanning)法によって特徴を明らかにした標的エピトープを用いたB細胞受容体レパートリーの詳細な解析により、JN.1によって誘導される記憶B細胞の優位性が明らかになった。IGHV3-53/3-66由来のクラス1中和抗体(NAb)は、JN.1に対するNAbの野生株への反応性にとって重要な要因である。しかし、KP.2とKP.3は、これらの抗体の多くのサブセットやJN.1によって誘導される抗体さえ回避するため、ブースター(追加免疫)を更新する必要性を支持している。JN.1によって誘導されたオミクロン株特異的な抗体も、オミクロン株全般に高い効力を持つことが実証された。これらのNAbに対する免疫回避ホットスポットは既に変異しており、結果的に回避に対するより強い免疫障壁を引き起こし、また回避されたNAbが反応性を回復する可能性が示された。加えて、IGHV3-53/3-66由来抗体が広く見られること、それらが全てのオミクロン株特異的NAbと競合する能力は、オミクロン株特異的なナイーブB細胞の活性化に阻害効果を持つことを示唆しており、これはおそらくmRNAワクチン接種者における顕著な免疫インプリンティングを説明している。これらの知見は、オミクロン株のXBBからJN.1への抗原不連続変異に対する抗体応答の進化を明らかにし、JN.1系統、特にKP.2やKP.3を基にしたワクチンブースターを開発することの重要性を浮き彫りにしている。

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