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免疫学:異常な免疫–上皮前駆細胞ニッチはウイルス性肺後遺症を引き起こす
Nature 634, 8035 doi: 10.1038/s41586-024-07926-8
呼吸器ウイルス感染の長期的な生理的影響は、特に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック(世界的大流行)の後、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)急性期後後遺症(PASC)と命名され、大きな公衆衛生的懸念へと急速に発展している。これらの後遺症の細胞レベルや分子レベルでの病因は十分に明らかにされていない一方、感染後の異常な免疫応答や臓器回復障害、あるいはその両方を示す証拠が増えている。しかし、PASCの状況でこれらの過程を結び付ける正確な機構はまだ不明である。今回我々は、呼吸器系PASC患者の3つのコホートからの手掛かりを基に、ウイルス感染後肺疾患のマウスモデルを確立し、呼吸器系PASCの繊維増殖に特有の異常な免疫–上皮前駆細胞ニッチを突き止めた。空間トランスクリプトーム解析と画像化を用いて、肺に常在するCD8+ T細胞とマクロファージの相互作用が、急性ウイルス性肺炎後の肺胞の再生障害や繊維化の後遺症の誘導に中心的な役割を担っていることが見いだされた。具体的には、CD8+ T細胞由来のIFNγやTNFが局所のマクロファージを刺激してIL-1βを慢性的に放出させ、その結果、異形成の上皮前駆細胞と肺繊維化が長期間持続する。特に、IFNγとTNF、あるいはIL-1βを治療的に中和すると、肺胞の再生と肺機能が顕著に改善した。我々は、初期介入を必要とする他の方法とは対照的に、急性疾患寛解後に繊維性疾患を救済する治療戦略に重点を置いており、これによってPASCやウイルス感染後疾患の臨床管理における現在のアンメットニーズに取り組んでいる。