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免疫学:小児多系統炎症性症候群の分子模倣

Nature 632, 8025 doi: 10.1038/s41586-024-07722-4

小児多系統炎症性症候群(MIS-C)は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染後の重篤な後遺症だが、この幅のある炎症性症候群とSARS-CoV-2感染を結び付ける病態生理学的機序は解明されていない。今回我々は、MIS-C患者の大規模試料セットを利用して、MIS-Cの発症に関連する抗ウイルス経路の調節に関与するタンパク質SNX8内の特定の自己反応性エピトープなど、患者の自己抗体が標的とする一連の明確な宿主タンパク質群を見いだした。これと並行して、SARS-CoV-2の全プロテオームに対するMIS-C患者の抗体応答も調べたところ、SARS-CoV-2のヌクレオキャプシドタンパク質の特定ドメインに対する反応性が高まっていることが明らかになった。このウイルスのヌクレオキャプシドタンパク質と宿主のSNX8タンパク質は、免疫原性領域に顕著な配列類似性を有していることが分かった。その結果として、抗SNX8自己抗体を有する小児の多くは、SNX8とSARS-CoV-2ヌクレオキャプシドタンパク質の両方のエピトープに結合する交差反応性T細胞も有していることが明らかになった。まとめると今回の知見から、MIS-C患者では、自己タンパク質SNX8との交差反応性に関連するSARS-CoV-2ヌクレオキャプシドタンパク質との特徴的な免疫応答が起こることが示唆される。これは、SARS-CoV-2感染とMIS-Cとの機構的関連性を示しており、さまざまな感染後自己炎症性疾患に対する理解を深める上で重要な意味を持つものである。

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