コロナウイルス:インプリンティングされたSARS-CoV-2への体液性免疫はオミクロン株のRBDの収斂進化を誘導する
Nature 614, 7948 doi: 10.1038/s41586-022-05644-7
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)オミクロン株の連続的な進化によって、BA.5よりも増殖優位性を示す多数の変異株が急速かつ同時に出現した。多様な進化経路をたどったにもかかわらず、受容体結合ドメイン(RBD)の変異は、いくつかのホットスポットに収斂している。そのような急激な収斂進化の駆動力と行き着く先や、それらが体液性免疫へ与える影響は、まだ明らかにされていない。今回我々は、これらの収斂変異が、十分なACE2結合能を維持しながら、中和抗体薬や回復期血漿(BA.5ブレイクスルー感染からの血漿を含む)の回避を引き起こし得ることを示す。BQ.1.1.10(BQ.1.1 + Y144欠失)、BA.4.6.3、XBB、CH.1.1は、調べた中で抗体回避性の最も高い株である。我々は、この収斂進化の起源を明らかにするために、エスケープ変異のプロファイルと、BA.2やBA.5のブレイクスルー感染者から単離したモノクローナル抗体の中和活性を決定した。その結果、体液性免疫インプリンティングのため、BA.2や特にBA.5のブレイクスルー感染により中和抗体結合部位の多様性が低下して、非中和抗体クローンの割合が増加し、それによって体液性免疫圧が高まり、RBDの収斂進化が促進されることが分かった。さらに我々は、このRBDの収斂変異が高深度変異スキャン法によるプロファイルから正確に推測できることや、BA.2.75やBA.5の派生株の進化傾向が、作製した収斂性のシュードウイルス変異株を介して十分に予測可能であることを示す。これらの結果は、現状の集団免疫やBA.5ワクチンのブースター(追加免疫)接種が、収斂したオミクロン変異株の感染を効率良く防げないことを示唆している。