Analysis
疫学:WHOによるCOVID-19パンデミック関連超過死亡数の推計
Nature 613, 7942 doi: 10.1038/s41586-022-05522-2
世界保健機関(WHO)には死亡数に関する統計を集計して配布する権限があり、我々は2020年初頭から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の進行を追跡してきた。COVID-19死亡数に関して報告された統計は、検査の利用しやすさにばらつきがあることや診断能力の違い、COVID-19死因証明に一貫性がないことから、多くの国々で問題があるものとなっている。COVID-19パンデミックは、直接的な被害だけでなく、広範な副次的被害も引き起こし、生命や生活の損失につながった。今回我々は、2020年と2021年の月次超過死亡数を推計することによって、COVID-19パンデミックの影響について包括的かつ一貫して計測したことを報告する。我々は、ベイズ推定法を適用して不確実性を定量化する過分散ポアソンカウントフレームワークを使って、完全な報告データのない地域におけるパンデミック期間中の全死因死亡数を予測した。我々は、世界の超過死亡数を1483万人と見積もった。これは、この期間中にCOVID-19による死亡と報告された542万人の2.74倍に当たる。6つのWHO地域全体で、超過死亡数の推定値に大きなばらつきがあった。我々は、これらの推定値算出に使ったデータと方法について説明し、乖離が続く場合の報告を改良する必要性を明確にした。さまざまな集約尺度(summary measure)や、各国の地域的流行の応答性への対応をランク付けすることの危険性について議論する。