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コロナウイルス:ワクチン接種なしでは、SARS-CoV-2オミクロン変異株感染によって得られる他の変異株に対する交差免疫は限定的である

Nature 607, 7918 doi: 10.1038/s41586-022-04865-0

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のデルタ株やオミクロン株は、世界的に重要な懸念される変異株(VOC)である。デルタ株の感染者は重症の肺疾患を発症するリスクがあるが、オミクロン株の感染は、特にワクチン接種者では軽症になることが多い。そこで、オミクロン株の感染拡大が将来の変異株に対する交差防御につながり、パンデミック(世界的大流行)の終息が加速されるかどうか、という疑問が生じる。今回我々は、ワクチン接種していない場合、オミクロン株の感染は、マウスやヒトで限定的な体液性免疫応答しか誘導しないことを示す。ヒトACE2受容体を過剰発現するマウスにオミクロン株を感染させた場合の血清は、オミクロン株のみを中和し、他のVOCは中和しないのに対して、WA1株やデルタ株の感染後は、他の変異株に対するより広域な交差中和が観察された。WA1株やデルタ株とは異なり、感染動物の肺や脳におけるオミクロン株の複製レベルは低く、引き起こされる疾患は軽症で、炎症性サイトカインの発現や肺常在性T細胞の活性化は低い。オミクロン株に感染したワクチン非接種者の血清も同様に、オミクロン株のみに対する限定的な中和しか示さなかった。対照的に、オミクロン株によるブレイクスルー感染は、全てのVOCに対して全体的により高い中和抗体価を誘導した。我々の結果は、オミクロン株の感染はワクチンによって誘導された既存の免疫を増強するが、それだけでは、ワクチン非接種者でオミクロン株以外の変異株に対する広域防御をもたらさないだろうことを示している。

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