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免疫学:感染マクロファージにおけるインフラマソーム活性化がCOVID-19の病態を引き起こす

Nature 606, 7914 doi: 10.1038/s41586-022-04802-1

重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、持続性の肺炎症、炎症性サイトカイン産生、ウイルスRNA、持続性のインターフェロン(IFN)応答で特徴付けられる。これらは全て、COVID-19のヒト化マウスモデルであるMISTRG6-hACE2マウス(ヒトの免疫系を持つ)に、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)を感染させた際に再現され、病態の出現に必要である。COVID-19の慢性期にin vivoで、レムデシビルによるウイルス複製の阻害、あるいは抗IFNAR2抗体によりIFN刺激される下流のカスケードの阻害を行うと、過剰な免疫炎症反応、特に炎症性マクロファージが減弱する。今回我々は、ヒト肺に常在するマクロファージにおけるSARS-CoV-2の感染と複製が、COVID-19の重要な駆動因子であることを示す。ヒトマクロファージは、CD16受容体やACE2受容体が仲介する感染に応答して、インフラマソームを活性化し、インターロイキン1(IL-1)やIL-18を放出して、ピロトーシスを起こすことで、肺の過剰炎症状態に関与する。NLRP3インフラマソーム経路を阻害すると慢性肺病変が回復することから、肺の炎症にはインフラマソームの活性化とそれに伴う炎症反応が必要だと分かった。特に、こうしたインフラマソーム活性化の阻害が、感染マクロファージによる感染性ウイルスの放出につながることは重要である。このように、インフラマソームは、炎症性サイトカインの産生やピロトーシスによる自死を介して、SARS-CoV-2による宿主感染に対抗し、生産的なウイルスの複製・増幅を防いでいる。

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