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神経画像化:英国バイオバンクにおけるSARS-CoV-2感染と脳構造の変化との関連

Nature 604, 7907 doi: 10.1038/s41586-022-04569-5

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では脳に関連した異常が見られることを示す強力な証拠がある。しかし、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染の影響がより軽度の症例でも検出可能かどうか、また、それによって脳の病変に関与している可能性のある機構を明らかにできるかどうかについては不明である。今回我々は、磁気共鳴画像法(MRI)を用いて2回の脳画像化を行った英国バイオバンク参加者785人(51~81歳)において、脳の変化を調べた。この中には2回のMRIスキャンの間にSARS-CoV-2検査で陽性になった401人(診断と2回目のスキャンの間の間隔は平均して141日)と対照群の384人が含まれる。感染前の画像データが利用できるため、既存のリスク因子を疾患の影響として誤解釈する可能性が軽減される。これら2つのグループを比較したところ、SARS-CoV-2感染者では、(1)眼窩前頭皮質や海馬傍回における灰白質の厚さや組織コントラストの大幅な減少、(2)一次嗅皮質に機能的に接続している領域での組織損傷マーカーの大きな変化、(3)全体的な脳サイズの大幅な減少など、顕著な長期的影響が見られることが明らかになった。また、SARS-CoV-2感染者では、2つの時点の間で平均して大きな認知機能低下も見られた。重要なことに、こうした画像と認知機能の長期的影響は、入院した15人の患者を除外した後でも観察された。これらの主に大脳辺縁系の画像で得られた結果は、嗅覚経路を介したこの疾患の変性を伴う広がり、神経炎症の事象、または嗅覚障害による感覚入力の喪失の、in vivoでの特徴である可能性がある。こうした有害な影響を部分的に回復させることができるかどうか、また、これらの影響が長期的に持続するかどうかは、今後の追跡研究で調べる必要がある。

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