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コロナウイルス:オミクロン株の受容体結合と抗体中和の分子基盤

Nature 604, 7906 doi: 10.1038/s41586-022-04581-9

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)オミクロン変異株は、著しい免疫回避を示し、世界中に急速に広がっている。オミクロン株の高い伝播性と強まった免疫回避の構造基盤を理解することは大変重要である。今回我々は、クライオ電子顕微鏡を用いて、オミクロン株のスパイク(S)タンパク質の開いた状態と閉じた状態の両方を示す。これらはG614株のSタンパク質がとる同様の状態よりもコンパクトであるようで、オミクロン株のアミノ酸残基置換によって、プロトマー間やS1–S2の相互作用の増強が誘導されることと関連している可能性がある。閉じた状態の方が優勢であることは、オミクロン株の免疫回避のためのコンホメーションによる遮蔽機構を示している可能性がある。我々はまた、オミクロンS–ACE2複合体の3つの状態を捉え、オミクロン株の受容体結合モチーフ(RBM)内の置換によって、新たな塩橋や水素結合、より有利な静電気的表面特性、全体的に強化されたS–ACE2相互作用が生じることを示した。これらは、G614株よりもオミクロン株でSのACE2親和性が高いことと一致する。さらに我々は、S3H3(オミクロン株を含む主要な懸念される変異株を交差中和できる抗体)のFabと複合体を形成しているオミクロン株のSの構造を決定し、S3H3を介した広域中和活性に関する構造基盤を明らかにした。我々の結果は、オミクロン株の受容体結合、抗体中和や抗体回避を明らかにしており、SARS-CoV-2に対する広範に有効なワクチンの設計にも役立つだろう。

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