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コロナウイルス:ex vivoでのヒト気管支や肺におけるSARS-CoV-2オミクロン変異株の複製

Nature 603, 7902 doi: 10.1038/s41586-022-04479-6

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の、ヒト間での伝播性が漸進的に高まった懸念される変異株(VOC)の出現は、世界の公衆衛生に対する脅威となっている。SARS-CoV-2オミクロン変異株も、自然感染やワクチンによる免疫を回避するが、その並外れた伝播性が、免疫回避に起因するのか、固有のウイルス学的特性に起因するのかは明らかではない。今回我々は、ヒト気管支や肺のex vivo外植片培養において、野生型ウイルス、D614G株、アルファ(B.1.1.7)株、ベータ(B.1.351)株、デルタ(B.1.617.2)株、そしてオミクロン(B.1.1.529)株の複製能と細胞向性について比較した。また、感染に対するTMPRSS2やカテプシンへの依存性も評価した。その結果、オミクロン株は、調べた他の全てのSARS-CoV-2変異株よりも気管支での複製は速いが、肺実質での複製効率は劣ることが明らかになった。全てのVOCは、野生株と同様の細胞向性を示した。オミクロン株は、調べた他のVOCよりもカテプシンに対する依存性が高く、これは、オミクロン株が他の変異株とは異なる経路を介して細胞へ侵入することを示唆している。重症度は多数の要因によって決定されるが、ヒト肺においてオミクロン株の複製能の低下が見られることは、疫学研究で現在報告されているオミクロン株による疾患重症度の低下の説明となり得る。これらの知見は、これまでの疫学的観察に対する重要な生物学的相関性を示している。

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