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コロナウイルス:SARS-CoV-2スパイクに対するT細胞応答はオミクロン株を交差認識する

Nature 603, 7901 doi: 10.1038/s41586-022-04460-3

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のオミクロン(B.1.1.529)変異株には、多数のスパイクタンパク質変異があり、これらは抗体中和からのウイルスの回避に関与し、感染に対するワクチン防御を低下させている。T細胞などの適応免疫応答の他の構成要素が、どの程度オミクロン株への標的能を維持していて、重篤な転帰からの防御に関与しているのかは分かっていない。今回我々は、Ad26.CoV2.SワクチンやBNT162b2ワクチンを接種した被験者と、ワクチン未接種の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)回復期患者(n = 70)において、T細胞がオミクロン株のスパイクタンパク質に応答する能力を評価した。調査したグループ全体で、スパイクに対するCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の応答の70〜80%が維持されていた。さらに、オミクロン株はかなり多くの変異を有しているにもかかわらず、オミクロン株に交差反応するT細胞応答の強さは、ベータ(B.1.351)株やデルタ(B.1.617.2)株と同等だった。また、オミクロン株への感染で入院した患者(n = 19)では、従来株のスパイクタンパク質やヌクレオキャプシドタンパク質、膜タンパク質に対するT細胞応答は、従来株やベータ株、デルタ株が優勢だったこれまでの波の入院患者(n = 49)のT細胞応答と同程度であった。このように、オミクロン株では多数の変異や中和抗体に対する感受性の低下があるにもかかわらず、ワクチンや感染によって誘導されるT細胞応答の大部分はオミクロン株を交差認識した。よく保存された、オミクロン株に対するT細胞免疫が、重症COVID-19の防御に関与するのか、また南アフリカやその他の地域で初期に臨床で観察されたことと関連しているかどうかは、今後明らかにすべき課題である。

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