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コロナウイルス:オミクロン株は既存のSARS-CoV-2中和抗体の大部分を回避する

Nature 602, 7898 doi: 10.1038/s41586-021-04385-3

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のB.1.1.529(オミクロン)変異株には、受容体結合ドメイン(RBD)に15の変異がある。オミクロン株がRBDを標的とする中和抗体を回避する仕組みについては、早急に調べる必要がある。今回我々は、ハイスループットの酵母ディスプレイスクリーニングを用いて、247のヒト抗RBD中和抗体について、これらを回避するRBD変異のプロファイルを決定し、これらの中和抗体が、教師なしクラスタリングによって6つのエピトープ群(A〜F)に分類できることを示す。この分類は知識ベースの構造分類と非常に一致している。オミクロン株のさまざまな単一変異は、異なるエピトープ群の中和抗体の効果を弱めることができる。具体的には、A〜D群の中和抗体は、エピトープがACE2結合モチーフに重なっており、K417N、G446S、E484A、Q493Rによってかなり回避される。E群(例えばS309)とF群(例えばCR3022)の抗体は、広範なサルベコウイルス中和活性を示すことが多く、オミクロン株の影響をあまり受けないが、それでも中和抗体の一部はG339D、N440K、S371Lによって回避される。さらに、オミクロン株のシュードウイルスに対する中和から、単一の変異には活性を維持していた中和抗体も、それらの抗体が認識するエピトープに複数の相乗的な変異があることで、回避され得ることが示された。全体で、検討した中和抗体の85%以上がオミクロン株によって回避された。中和抗体ベースの薬剤に関して、LY-CoV016、LY-CoV555、REGN10933、REGN10987、AZD1061、AZD8895、BRII-196の中和能は、オミクロン株によって大幅に低下したが、VIR-7831とDXP-604は、有効性は低下したものの効果は維持されていた。まとめると我々のデータは、オミクロン株の感染がかなりの体液性免疫回避を引き起こす可能性があること、サルベコウイルスの保存された領域を標的とする中和抗体が最も有効であり続けるだろうことを示唆している。我々の結果は、オミクロン株や今後の変異株に対する抗体ベースの薬剤やワクチンを開発するための情報となる。

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