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コロナウイルス:SARS-CoV-2の懸念される変異株の適応度上昇は、アルファ株では見られるがベータ株では見られない

Nature 602, 7896 doi: 10.1038/s41586-021-04342-0

懸念される変異株(VOC)の出現が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)を進行させている。VOCの複製や伝播の機構を理解するためには、主要なVOCや前駆株の複製や伝播の実験的な評価が必要である。今回我々は、VOCであるアルファ株(別名B.1.1.7)やベータ株(B.1.351)由来のスパイクタンパク質(S)は、前駆変異株のS(D614G)よりも、ヒトアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体に対するin vitroでの親和性が高いことを示す。S(D614G)を発現する前駆変異株ウイルス(wt-S614G)やアルファ変異株は、ヒト鼻腔の気道上皮の培養で同等の複製速度を示したが、ベータ変異株はどちらの株との競合にも敗れた。in vivoでの競合実験では、フェレットや2つのマウスモデルにおいて、wt-S614Gよりもアルファ株が明らかな適応優位性を示した。つまり、S中のこの置換が適応優位性の主要なドライバーであった。高いウイルス複製レベルを維持するハムスターでは、アルファ株とwt-S614Gは同等の適応度を示した。対照的にベータ株は、ハムスターやヒトACE2を発現するマウスにおいて、アルファ株やwt-S614Gとの競合に敗れた。我々の研究は、VOCの適応度の解析には複数のモデルの使用が重要であることを明らかにするとともに、アルファ株は上気道での複製に適応し、制限のあるモデルではin vivoでの高い伝播性を示す一方で、ベータ株はナイーブな動物で、アルファ株やwt-S614Gとの競合に勝たないことを実証している。

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