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コロナウイルス:SARS-CoV-2デルタ株のP681R変異による細胞融合活性と病原性の増強

Nature 602, 7896 doi: 10.1038/s41586-021-04266-9

現在の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)においては、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のウイルスゲノムにさまざまな変異が蓄積しており、本論文の執筆時点では、4つの懸念される変異株(VOC)がヒト社会に有害な影響を及ぼす可能性があると考えられている。最近出現した懸念される変異株B.1.617.2/デルタ株は、2021年春にインドで起こったCOVID-19の急増と密接に関連している。しかし、B.1.617.2/デルタ株のウイルス学的特性は分かっていない。今回我々は、B.1.617.2/デルタ株の細胞融合活性が高いこと、また、感染ハムスターではSARS-CoV-2の原株よりも顕著に病原性が高いことを示す。スパイクタンパク質のP681R変異は、この系統で高度に保存されていて、スパイクタンパク質の切断を促進し、ウイルスの細胞融合活性を高めた。さらに、P681R変異を持つウイルスは、その親株ウイルスよりも病原性が高いことが分かった。我々のデータは、P681R変異がB.1.617.2/デルタ株のウイルス学的表現型の特徴であり、病原性の増強に関連することを示唆している。

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