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コロナウイルス:スパイクのN501Y置換はSARS-CoV-2の感染と伝播を増強する

Nature 602, 7896 doi: 10.1038/s41586-021-04245-0

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の原因である重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のB.1.1.7変異株(別名アルファ株)は、2020年夏に英国で出現した。この変異株の流行は、感染効率および/あるいは伝播効率の上昇により、急速に拡大した。アルファ変異株のウイルスゲノム中には19の非同義変異が存在し、これには細胞の受容体と相互作用して感染や向性を仲介するスパイクタンパク質内の8つの置換や欠失が含まれる。今回我々は、逆遺伝学的手法を用いて、8つの個々のスパイクタンパク質置換のうち、N501Y置換のみが、ハムスターモデルの上気道や初代ヒト気道上皮細胞において、一貫して複製の適応度の獲得をもたらすことを示す。N501Y置換は、アルファ株スパイクタンパク質における8種類の変異による増強されたウイルス伝播の表現型を再現することから、この置換がアルファ変異株の高い伝播性の主要な決定因子であることが示唆された。機構的には、N501Y置換は、細胞受容体に対するウイルススパイクタンパク質の親和性を増強する。ブラジルや南アフリカなどで見られた収斂進化が示唆するように、我々の結果は、スパイクのN501Y置換が懸念の大きい適応変異であることを示している。

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