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がん:乳がん治療応答のマルチオミクス機械学習予測因子

Nature 601, 7894 doi: 10.1038/s41586-021-04278-5

乳がんは、悪性腫瘍細胞と腫瘍微小環境からなる複雑な生態系である。こうした腫瘍生態系の組成とその内部の相互作用は、細胞傷害性療法への応答に影響するが、そうした応答の予測因子を構築する取り組みには、この知見が組み込まれていない。我々は、手術前にHER2(ERBB2によりコードされる)を標的とした化学療法を受けた患者と受けていない患者の計168人から採取した治療前の乳がん生検について、臨床的、デジタル病理学的、ゲノミクス的、トランスクリプトミクス的なプロファイルを収集した。そして、手術時の病理評価項目(完全奏効または残存病変)を、それらの診断用生検試料におけるマルチオミクス的特徴と関連付けた。今回我々は、治療への応答は、治療前の腫瘍生態系によって変わり、そのマルチオミクス的な全体像は機械学習を用いて予測モデルに統合できることを示す。治療後の残存病変の程度は、腫瘍の変異とコピー数の全体像、腫瘍増殖、免疫浸潤、T細胞の機能不全や排除など、治療前の特性と単調相関していた。これらの特徴をマルチオミクス機械学習モデルに組み入れて、外部検証コホート(患者75人)で病理学的完全奏効を予測したところ、その曲線下面積は0.87だった。つまり、治療への応答は、データの統合と機械学習を通じて得られた腫瘍生態系全体のベースライン特性により決定される。この手法は、他のがんの予測因子を開発するためにも利用できるだろう。

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