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構造生物学:DNA修復タンパク質DNA-PKcsの阻害剤による調節についての構造学的知見

Nature 601, 7894 doi: 10.1038/s41586-021-04274-9

DNA依存性プロテインキナーゼ触媒サブユニット(DNA-PKcs)は、ヒトでDNA二本鎖切断の検出と修復を行う2つの主要な経路の1つである、非相同末端結合修復で中心的役割を果たしている。DNA-PKcsは病気によって生じるDSBの修復に非常に重要であり、DNA-PKcs阻害剤はDSBを誘導する放射線療法や化学療法と組み合わせて用いられて、がん治療薬として関心を集めている。開発されたDNA-PKcs選択的阻害剤の多くは、さまざまながんの治療薬となる可能性を示している。今回我々は、HeLa細胞の核抽出物から無傷状態で精製されたヒトDNA-PKcsについて、アデノシン5′-(γ-チオ)三リン酸(ATPγS)、また臨床試験が進行中の薬剤候補を含む4種の阻害剤(ウォルトマンニン、NU7441、AZD7648とM3814)と複合体を形成した状態のクライオ電子顕微鏡構造を報告する。これらの構造から、活性部位でのATP結合の触媒反応前の詳細が分子レベルで明らかになり、競合的阻害剤の作用様式と特異性についての知見が得られた。リガンドの結合によりPIKK調節ドメイン(PRD)の動きが引き起こされ、pループとPRDのコンホメーションの間のつながりが明らかになったことは注目に値する。さらに、DNA依存性プロテインキナーゼホロ酵素に関する電気泳動移動度シフト解析とクライオ電子顕微鏡による観察から、リガンド結合はホロ酵素複合体の集合に負のアロステリック効果、つまり阻害的影響を及ぼすことはなく、阻害剤はATPとの直接的な競合により機能していることが示された。まとめると、今回報告された構造は、DNA-PKcsを標的とする合理的な薬物設計における今後の取り組みに大いに役立つと考えられ、大型で扱いにくい標的に対する構造ベースの薬物開発にクライオ電子顕微鏡が持つ能力を実証している。

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