Article

生態学:水銀で汚染された魚類個体群の回復を示す実験的証拠

Nature 601, 7891 doi: 10.1038/s41586-021-04222-7

水銀(Hg)の人為的放出はヒトの健康問題の1つだが、それは、無機Hgが水界生態系で主に微生物によりメチル化されて強力な有毒物質のメチル水銀(MeHg)を形成し、これがヒトの消費する魚類の体内で高濃度に生物濃縮されるためである。Hg汚染の規制の魚類のMeHg濃度に対する効果を予測するのは、MeHgの生成および生物濃縮に影響を与える要因が多いために容易でない。今回我々は、ある北方湖およびその流域へのHg投入減少後に魚類のMeHg濃度が低下する規模およびタイミングを明らかにするため、15年にわたって全生態系規模の単一因子実験を行った。7年間の投入期に、我々は数種類の濃縮Hg同位体を投入して局所的なHg湿性沈着速度を5倍に増大させた。その後、Hg同位体は次第にMeHgとして食物網に組み込まれるようになったが、流域に投入された同位体の大部分がその場にとどまっていたことから、食物網に組み込まれたHgは主として湖に投入されたものであることが分かった。その後、同位体の投入を停止すると、湖へのHg負荷はほぼ100%減少した。標識MeHgの濃度は、より栄養段階の低い生物では最大91%急低下し、これによって8年間で38~76%という大型魚類個体群のMeHg濃度の急低下が引き起こされた。流域からのHg負荷は沈着速度の低下と一致する形で減少するわけではない可能性があるものの、本実験は、湖沼へのHg負荷のいかなる減少も、それが直接の沈着であれ流出によるものであれ、魚類消費者への直接的な利益となることを明確に示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度