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コロナウイルス:SARS-CoV-2 B.1.617.2デルタ変異株の複製および免疫回避

Nature 599, 7883 doi: 10.1038/s41586-021-03944-y

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のB.1.617.2(デルタ)変異株は、2020年末にインドのマハーラーシュトラ州で最初に特定され、その後インド全土に広がり、B.1.617.1(カッパ)株やB.1.1.7(アルファ)株を含む既存の株よりも優勢となっている。in vitroでB.1.617.2は、D614Gを有する野生型の武漢株(Wuhan Hu-1)と比較して、回復者由来の血清中和抗体に対する感受性は6分の1に、ワクチンによって誘導された抗体に対する感受性は8分の1に低下していた。B.1.617.2に対する血清中和抗体価は、BNT162b2ワクチン接種者に比べ、ChAdOx1ワクチン接種者でより低かった。B.1.617.2スパイクのシュードタイプウイルスでは、受容体結合ドメインやアミノ末端ドメインに対するモノクローナル抗体への感受性が低下していた。B.1.617.2は、気道オルガノイド系やヒト気道上皮系で、B.1.1.7よりも高い複製効率を示した。これは、B.1.1.7のスパイクと比較してB.1.617.2のスパイクの多くが開裂された状態であることと関連している。B.1.617.2のスパイクタンパク質は、非常に効率良くシンシチウムを形成させることができ、野生型スパイクによる形成と比較して、中和抗体による阻害に対する感受性が低かった。また、B.1.617.2はB.1.617.1よりも複製効率やスパイクを介した侵入効率が高く、これはおそらくB.1.617.2の優位性を説明している。インドでウイルス株が混在して流行した時期に、同国の3つの施設においてSARS-CoV-2に感染した130人以上の医療従事者の解析では、非B.1.617.2株と比べてB.1.617.2に対するChAdOx1ワクチンの有効性低下が観察されたが、残余交絡の可能性にも注意が必要である。免疫回避を示す高度に適応したB.1.617.2デルタ変異株に対するワクチン有効性の減弱は、ワクチン接種後の段階でも感染制御対策を継続する必要があることを示している。

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