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免疫学:レクチンはSARS-CoV-2感染を増強し、中和抗体に影響を及ぼす

Nature 598, 7880 doi: 10.1038/s41586-021-03925-1

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染は、細胞への付着と膜融合の両方が関与していて、アンギオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体依存性である。逆説的ではあるが、気道でのACE2受容体のレベルは低いことが分かっており、このことから感染を促進するさらなる機構がある可能性が示唆されている。今回我々は、C型レクチン受容体であるDC-SIGN、L-SIGN、シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン1(SIGLEC1)が、ACE2を介した感染を増強したり、スパイク特異的抗体の異なるクラスの中和活性を調節したりすることによって、付着受容体として機能することを示す。アミノ末端ドメインに対する抗体や、受容体結合ドメインの基部の保存された部位に対する抗体は、ACE2過剰発現細胞への感染を中和する活性が低いが、レクチンによって促進された感染は効果的に阻害した。逆に、受容体結合モチーフに対する抗体は、ACE2過剰発現細胞への感染を強力に中和する一方で、DC-SIGNやL-SIGNを発現する細胞への感染を中和する活性が低く、スパイクの融合性再構成を引き起こして、細胞間の融合を促進した。まとめるとこれらの知見から、SARS-CoV-2によるACE2依存性感染を増強するレクチン依存性経路が特定されるとともに、異なるクラスのスパイク特異的抗体による異なる中和機構が明らかになった。

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