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コロナウイルス:ニューヨークにおける特定後のSARS-CoV-2 B.1.526の出現と拡大
Nature 597, 7878 doi: 10.1038/s41586-021-03908-2
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染は、ここ数か月で世界的に急増しており、同時にウイルスには著しい進化が生じている。スパイクタンパク質内の広範な変異は、ワクチンや治療用モノクローナル抗体の有効性を脅かす可能性がある。懸念される2つの特徴的なスパイク変異は、抗体の中和活性の喪失に重要な役割を担うE484Kと、B.1.1.7系統の急速な世界的伝播の駆動因子であるN501Yである。今回我々は、E484Kを持つ変異株のB.1.526系統(別名イオタ株)の出現と、この株が2021年初頭にニューヨーク市で優勢になったことについて報告する。この変異株は、臨床で使用されている2つの治療用モノクローナル抗体に部分的あるいは完全な耐性を示し、SARS-CoV-2感染からの回復者の血漿や、ワクチン接種者の血清による中和への感受性が低下していて、抗原性が低いという課題がある。現在、B.1.526系統の存在は、米国の全50州全ておよび他の多くの国で報告されている。B.1.526はニューヨークにおいてそれまでの系統と急速に置き換わり、伝播優位性は35%と推定された。これらの伝播動態は、E484Kを持つ亜系統の相対的な抗体耐性とともに、B.1.526の急激な増加と急速な拡大に関与したと考えられる。この地域ではSARS-CoV-2 B.1.526は当初B.1.1.7よりも優勢だったが、その後、B.1.1.7やそれに続く変異株の増加と同時に、その増加が鈍化した。