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医学研究:ワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症における抗体エピトープ
Nature 596, 7873 doi: 10.1038/s41586-021-03744-4
ワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症(VITT)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)アデノウイルスベクターワクチンのまれな有害事象である。VITTは、血小板第4因子(PF4)に対する血小板活性化抗体が関連している点でヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と類似しているが、VITT患者は、ヘパリンへの曝露なしに血小板減少症や血栓症を発症する。今回我々は、VITT患者の抗体のPF4上の結合部位を決定することを試みた。我々は、アラニンスキャニング変異誘発を行い、VITT患者(n = 5)の抗PF4抗体の結合が、PF4表面にある8つのアミノ酸(いずれもヘパリン結合部位内にある)に限定されていることや、その結合がヘパリンによって阻害されることを見いだした。対照的に、HIT患者(n = 10)の抗体は、PF4上の2か所の異なる部位に相当するアミノ酸に結合した。バイオレイヤー干渉法(Biolayer Interferometry:BLI)による実験でも、VITTの抗PF4抗体は、HITの抗PF4抗体と同程度の解離速度を有するにもかかわらず、PF4やPF4–ヘパリン複合体に対してより強力な結合反応を示すことが分かった。我々のデータは、VITT抗体はPF4上の同様の部位に結合することによってヘパリンの効果を模倣でき、これによってPF4四量体がクラスター化して免疫複合体を形成し、続いてFcγ受容体IIa(FcγRIIa、別名CD32a)依存的な血小板活性化が引き起こされることを示している。これらの結果は、血栓症の原因となり得る、VITT抗体による血小板の活性化を説明するものである。