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コロナウイルス:アカゲザルにおけるSARS-CoV-2 B.1.351に対するAd26.COV2.Sの防御効果

Nature 596, 7872 doi: 10.1038/s41586-021-03732-8

中和抗体を部分的に回避する重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)変異株の出現は、現在の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの有効性に対する脅威となっている。Ad26.COV2.Sワクチンは、SARS-CoV-2 WA1/2020株の安定化されたスパイクタンパク質を発現するもので、南アフリカなどのいくつかの地理的地域で、ヒトにおける症候性COVID-19に対する防御効果が最近実証されている(南アフリカではCOVID-19症例で塩基配列解読されたウイルスの95%はB.1.351変異株であった)。今回我々は、Ad26.COV2.Sがアカゲザル(Macaca mulatta)で、B.1.351変異株と交差反応する体液性および細胞性の免疫応答を誘導し、B.1.351チャレンジを防御することを示す。Ad26.COV2.Sは、WA1/2020よりもB.1.351に対して誘導する抗体の結合能や中和能が低かったが、WA1/2020、B.1.351、B.1.1.7、P.1、CAL.20Cの各変異株に対して同等のCD8+およびCD4+ T細胞応答を誘導した。対照アカゲザルをB.1.351に感染させると、WA1/2020に感染させるよりも、気管支肺胞洗浄液および鼻腔スワブでのウイルス複製レベルが高かった。Ad26.COV2.Sは、WA1/2020とB.1.351の両方をロバストに防御するが、このワクチンを接種したアカゲザルではB.1.351チャレンジ後により高レベルのウイルスが観察された。これらのデータは、Ad26.COV2.SがアカゲザルにおいてB.1.351チャレンジをロバストに防御することを実証している。我々の知見は、SARS-CoV-2の懸念される変異株のワクチンによる制御に重要な意味を持つ。

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