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コロナウイルス:SARS-CoV-2 mRNAワクチンはヒトの胚中心の持続的応答を誘導する

Nature 596, 7870 doi: 10.1038/s41586-021-03738-2

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2) mRNAを利用したワクチンは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の防御に約95%の有効性を示す。ヒトにおいて、これらのワクチンによって誘導される抗体分泌形質芽細胞と胚中心B細胞の動態については、まだ明らかになっていない。今回我々は、SARS-CoV-2の完全長のスパイク(S)遺伝子をコードするmRNAワクチンBNT162b2の接種を2回受けた14人において、末梢血(n = 41)と流入領域リンパ節での抗原特異的B細胞応答を調べた。Sタンパク質を標的とするIgGやIgAを分泌する循環血中の形質芽細胞は、2回目のワクチン接種の1週間後に最大に達し、その後減少し、3週間後には検出できなくなった。こうした形質芽細胞応答は、初期に流行したSARS-CoV-2株および新たに出現した変異株のSタンパク質に結合して中和する血清中の抗S抗体濃度が最大レベルに達する前に起こっており、これは特に、SARS-CoV-2に感染歴のある人(最もロバストな血清学的応答を生み出した人)で顕著であった。腋窩流入領域リンパ節の穿刺吸引液を調べたところ、初回のワクチン接種後に採取した被験者全てで、Sタンパク質に結合した胚中心B細胞が見つかった。これらの流入領域リンパ節では、2回目の追加免疫後少なくとも12週間、Sタンパク質に結合した胚中心B細胞と形質芽細胞が高頻度で維持された。胚中心B細胞由来のS結合モノクローナル抗体は、主にSタンパク質の受容体結合ドメインを標的としており、N末端ドメインやヒトβコロナウイルスのOC43、HKU1のSタンパク質と共通するエピトープに結合するクローンは少数だった。後者の交差反応性B細胞クローンは、SARS-CoV-2のSタンパク質だけを認識するものに比べて体細胞高頻度変異が高いレベルで見られたことから、記憶B細胞起源であることが示唆される。我々の研究は、ヒトでのSARS-CoV-2 mRNAワクチン接種は、持続的な胚中心B細胞応答を誘発し、ロバストな体液性免疫を生じることを実証している。

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