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コロナウイルス:2020年夏のヨーロッパ全域に及んだSARS-CoV-2変異株の広がり

Nature 595, 7869 doi: 10.1038/s41586-021-03677-y

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の広がりは、このウイルスが2019年末に出現して以来、ウイルスゲノム塩基配列の系統学的解析によって、前例がないほど詳細に追跡されてきた。SARS-CoV-2は国境が閉鎖される前の2020年初頭に世界中に広がったが、その後、大陸間の人の移動は大きく減少した。しかし、ヨーロッパ内での人の移動は2020年夏に再開された。今回我々は、2020年初夏にスペインで見つかり、その後、ヨーロッパ全域に広がったSARS-CoV-2変異株である20E(EU1)について報告する。この変異株の伝播性が増強している証拠は見つからなかったが、その代わり、スペインでの発生率の上昇、移動の再開、有効なスクリーニングや封じ込めの欠如が、この変異株の拡大をどのように説明できるのかを明らかにする。移動が制限されていたにもかかわらず、20E(EU1)は夏期旅行者によってヨーロッパ諸国へ数百回にわたり持ち込まれ、これがおそらくSARS-CoV-2感染を最小限にしようとする各地の努力を損なった可能性が高いと、我々は推定する。これらの結果は、疫学的に有利な条件において、伝播に大きな優位性がなくても、ある変異株がどのようにして急速に優勢になり得るのかを明らかにしている。ゲノムサーベイランスは、人の移動がどのようにSARS-CoV-2の伝播に影響し得るのか理解するため、従って、移動が再開されたときの将来的な封じ込め戦略に情報を伝えるために重要である。

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